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はじめに ― 魔物娘図鑑の世界

1.古の時代から、魔物娘の時代へ
 古き時代の魔王が統べる「魔物」とは、異形の姿を持つ怪物たちであった。
かつての凶悪な魔物たちは心を持たず、その凶暴性と食欲に突き動かされるまま獣の様に食糧となる人間を襲っていた。

 だが、それから長い年月を経た現在ではかつての魔王は消え、
強大な力を持つ一匹の「サキュバス」が新たな魔王となり、魔物たちにも大きな変化が現れていた。
 いつしか魔物達は、魔王と同様にすべてが美しい女性の姿を持ち、淫魔の性質を備えた「魔物娘」となったのだった。

 現在、魔物たちにはメスしか確認されておらず、
魔王である「淫魔」の性質を色濃く受け継ぐ彼女たちは、かつての様に人の肉を貪り喰うのではなく、
彼女達にとって至上のご馳走である「人間の男性の精」を糧とする様になった。
そして、それが最も含まれるのは男性の「精液」であり、性交を通じてそれを搾精する。 
 また、メスしか存在しないが故に、繁殖にも人間の男性が必要となる。
 それ故に、彼女達は本能的に人間の男性を求めており、気性や性質は種族によって様々に異なるが、
魔物たちの多くは性欲旺盛かつ好色で、人間の男性、そして人間の男性との性交が大好きである。

 幼い少女の様に見える魔物ですらも、成人男性を遥かに超える身体能力と、淫魔の抗えぬ魅力と誘惑の力を持ち、
時にその膂力をもって押し倒し、男性に馬乗りとなって強引に……
時に誘惑して男性の性欲を暴走させ、ケダモノの様に自分を襲わせて……
時に人間同士がそうする様に、しかし人間ならざる魅力で男性を虜にし、恋人となって愛と身体を交わし…
魔物に見初められた「あなた」は、この様に様々な形で襲われ、彼女達と交わることとなってしまうのだ。


2.魔物に襲われた男性の末路
 「あなた」が魔物に襲われ、成すすべなく精を搾り取られたとしても、
魔物達が肉を貪り喰われていた頃とは異なり、彼女達の吸精で命を失うことは決してない。
 しかしその一方で、淫魔のカラダや手管により「あなた」にもたらされる人ならざる搾精の快楽は、
「あなた」の心を容易く融かし、一度魔物と交われば、たちまち彼女達の虜となり、
最早「あなた」は彼女達と、彼女達との交わりによる快楽を手放すことなど考えられなくなっているだろう。

 「あなた」を手放すつもりが無いのは、あなたを襲った魔物も同じ。
 魔物たちは襲い掛かった男性と身体を重ねることで……時に、人間の少女の様に恋をする事で身体を重ねる以前より
特定の男性を「つがい」……すなわち「伴侶」として認識すると、彼女達の身体は伴侶に適応し、伴侶から精を搾り取る事に特化した身体に変化していく。
魔物の吸精器官はより伴侶にとって気持ちよく射精をさせやすいものに、魔物のカラダは伴侶との交わりでより強い快楽を得られる様に変わっていく。
 魔物の味覚も最大限に伴侶の精を味わえるものとなっていき、愛する伴侶である「あなた」の精は、他の男性の精が二度と口にできなくなる程に美味となる。
それに伴い、伴侶である「あなた」にはこれまで以上に「食欲」「性欲」「繁殖欲」が湧く様になり、逆にそれ以外の男性を「オス」としても「獲物」としても認識しない様になっていく。

 変化するのは彼女達だけではない。
 彼女達がその身に宿す「魔物の魔力」は、彼女達に宿る淫魔の力の根源のひとつである。
 この魔力は「あなた」の精を糧とする事で膨れ上がり、膨れ上がった魔力は交わりの中、重なる身体を通じて「あなた」にも流し込まれることとなる。
 
 流し込まれた魔物の魔力は「あなた」の肉体と生命力を活性化させ、彼女達の人並外れた愛欲に応えられる様に、魔物の伴侶として相応しい存在へと変えていく。

 魔物の誘惑や接触で、あの日の快楽を想起し容易く勃起する様になってしまった「あなた」の男性器は、
一度や二度の射精では萎えることなく、むしろ身体を重ねる度に更なる交わりを求めてより大きく硬く力を増していく。
 射精すれば、まるで魔物達の子宮を満たそうとするかの様に大量の精液が溢れる様になり、出しても出しても下腹部では新たな精液が作られ続け、何度でも大量の精液を搾り取られてしまう。
 
 この様に、身体を重ねる度に、「あなた」の「妻」となった魔物は強大な淫魔となっていき、
 魔物の「夫」となった「あなた」は、彼女にとって唯一にして最高の獲物となっていく。
 
 襲われても、自分の様に平凡な男であれば彼女達に見初められず、この運命から逃れられると思う者もいるだろう。
 しかし、それは大きな間違いである。
 彼女達が「ひと時の性欲を満たす」や「小腹が空いたから軽く精をつまむ」事を求めて男性を襲う事は決して無い。
 彼女達が男性を襲う時には「尽きぬ愛欲を注ぐため夫として」「好き放題に精を搾ることができ、食欲を満たし続けてくれる獲物として」「子を孕ませ、繁殖欲を充足させてくれる唯一のオスとして」
その全ての欲望が獲物である「あなた」へと向けられている。
 彼女達が「あなた」を襲うのは、これからの長い生を共に快楽と享楽の中で生きる「伴侶」を求めてのことなのだ。


▲書籍「魔物娘図鑑ワールドガイドⅢ サバトグリモワール」より、古の時代から、現在にかけての世界の変化。
 捕食者が捕食すれば、被食者が失われるという旧来の関係性が失われ、
捕食者の魔物と被食者の男性の間で魔力が循環し、お互いにとって無限の糧となる状態となっている。
 本来であれば、魔王の代替わり程度で世界の理が変わる様なことは無く、魔物達に起こる変化は「人間を吸い殺す女性型の魔物が増える」程度のものだろう。
魔王が当時の勇者と夫婦として結ばれた事をはじめとした、いくつもの「本来ならば発生しえないできごと」が重なった結果である様だ




▲書籍「魔物娘図鑑ワールドガイドⅢ サバトグリモワール」より、魔物に襲われた男の辿る運命
魔物達が伴侶を選ぶ基準は、人間のものとは異なり、衆目美麗な勇者の青年も、お腹の出た中年男も、
特定の女性を伴侶にしていないのであれば、もれなく魔物に狙われる事となるだろう。

多くの場合は中央のエキドナを侍らせる男性の様に、今後の人生の全てが魔物に愛と快楽を注がれ溺れ続ける甘ったるい搾精性活となる。
(今ではこの様子だが、エキドナが住処におびき寄せた男性を蛇の身体で拘束し、強引に交わったのが馴れ初めだそうだ。)

なお、男性でありながら「女性になりたいという願望を持つ」「同姓である男性を愛している」といった欲望を抱いている、
もしくは本人も気付かないうちに秘めている場合に限り、男性でも魔物へと変化する可能性がある。
魔物化については以下で説明する。



3.人間の女性の「魔物化」
 人間の男性を「伴侶候補であるオス」として認識している魔物達だが、その一方で人間の女性は「同属のメス」として認識している節がある。
 魔物たちは伴侶にした男性を独占することで、より長い時間や回数身体を重ね、より効率良く大量の精を得るためという観点からか、既に恋人や妻を持つ男性や特定の女性に強い好意を向けられている男性をオスとして認識せず避ける傾向がある。
 この習性は男性の伴侶が「同属のメス」である魔物だった場合のみならず、人間の女性であった場合でも同様である。
 (ただし比較的稀ではあるものの、複数の魔物により合意をもってハーレムが形成されるということは、英雄的な男性を主に度々発生する)
 
 また、魔物たちが標的の男性を定めた同属を認識した場合……
つまり、人間、魔物を問わず、男性に思いを馳せるも未だ結ばれていないという女性を見つけた場合、様々な手段で二人を結び付けて交わらせ、夫婦にしようとする事が多い。
 その際に、人間の女性に「男性を手に入れるための手段」を持たせるために、自らの魔力を注ぎ込むなどして人間の女性の「魔物化」が行われることがある。
魔物たちはこの不可逆の魔物化を、人間でいう「自分に似合う魅力的な髪型に変えた」程度の気軽さでやっている節があり、
人間と魔物の価値観の違いは見えるものの、この点からも最初から人間の女性を自分と同じ「同属」として認識している事が伺える。


 魔物化した人間の女性は魔物たちと同様、人間の男性との交わりを求め、何よりも好む淫らな気質と価値観を持つ様になる一方で、
 記憶や根底となる性格、他者との関係性や好意などの誰かへの想いは人間であった時から変化することはない。
(ただし、周囲からは消極的で内気だと思われ、好意を向けていた幼馴染の少年にも自信の無さ故に想いを伝えられていなかったある少女が、
魔物化で美しく変わった自分に精神が高揚したことで、奔放で放蕩を好む本性をさらけ出し、幼馴染の少年に迫った末に、日夜遊びに連れ回し、交わりに耽る様になったという例。
 長年連れ添った自身の夫に冷たく接し、つまらない男だ嫌いだと公言していたある夫人が、魔物化に伴い、長い結婚生活での夫との記憶、夫にときめいた事を魔物の価値観で再認識した結果、
夫への愛欲が膨れ上がり、新婚当初どころではない程に夫と身体を重ね合い、周囲に惚気話を振りまく様になったという例。
 この様な、他人から見ると「すっかり人が変わってしまった」例は無数に存在する)


▲書籍「サキュバスノート」より淫魔の姉妹
 魔物化した人間の女性は、自らに魔物になったことによる快楽の世界と、手に入れたい男性を骨抜きにする力を与えてくれた魔物を「姉」の様に慕う事が多いという。
 ただし、どれだけ慕おうとも「妹」にとっての一番は「伴侶である男性」またはそれを手に入れることであり、「姉」は二番目、
ふと見つけた男性には既に彼を想う少女がいて、それ故にお節介で妹にしてその恋路を叶えたものの、
自分は今回も夫を手にいられず……という悲しいサキュバスも少なくはない。
 普段から互いの身体を弄りあう姉妹ならば、時折ながら仲良く同じ男性を夫にするという場合も見られるが。



 また、魔物は「想い」が「性欲」に直結する生態を持つ。
 すなわち「共に過ごすうちに安心したり、かっこいい所を見てドキドキする」といった胸の高鳴りや、
 「親切にして貰ったり、助けて貰って好きになる」といった積み重ねた好意が、
 そのまま「このオスの精が欲しい、子を孕みたい」という身体の熱と子宮の疼きに直結するということである。
 
 そのためか、明け透けなまでに抱いた想いを、その場で性欲として相手にぶつけがちな生まれながらの魔物と比べ、
 人間の女性は「想い」を形にせずに溜め込みがちであり、溜め込んだまま魔物化することで、
 生まれながらの魔物以上に男性に強い愛欲と執着を向ける、より淫らな魔物となる事も多いという。



▲書籍「魔物娘図鑑ワールドガイドⅠ 堕落の乙女達」より勇者ウィルマリナからサキュバス・ウィルマリナへの魔物化
国ごと魔界へと堕ちた彼女は、過激な衣装に身を包み、淫らな笑みを浮かべる様になりましたが、それでも彼女が抱く想いは彼女のまま。
国の象徴である勇者と使用人という、決して結ばれない運命にある立場の差から秘めていた、幼馴染への想いを魔物化により開放……

無事、幼馴染と毎日を身体を重ねて過ごす関係となったウィルマリナは、彼女を堕とした淫魔から教わった「彼の欲情を常に自身に向けさせるための、淫らな装束」を身を纏い、
思い出す昨夜の快楽と、今夜の快楽を期待から淫らに歪む淫魔の笑みを常に浮かべる様になりました。

全ての人々を守ると公言していた以前と比べると、正直に好きな相手、嫌いな相手をハッキリさせる様になってはいるものの、根底にある正義感はそのまま。
今でも「魔界勇者」として国を護る勇者である。 ……のだが、部下達に任せ、夫婦での行く先々でヤりたい放題のえっち旅行にかまけ気味の様だ。



4.魔物のいる性活
 魔物と結ばれた人間は、多くの場合は夫婦で交わることが第一となるため、
例えば一日中を交わって過ごし、次の日に仕事をする(ただしことあるごとに休憩(交わり)を挟み、夜ももちろん交わる)といった様なゆったりした暮らしになりがち。
 だが、人間と魔物それぞれの能力や異なる技術、発想があわさり、かつ豊富な魔力資源を使える様になるため、
人間と魔物が共に暮らす街は、人間だけであったり、魔物だけであったりする街と比べて異なった、かつそれ以上の豊かさで発展していく傾向があるという。



▲書籍「ワールドガイド外伝Ⅲ コートアルフ」より、魔界の都市「デ・リューア」
 魔物の比率が高い街は、「男性を街へと誘い伴侶にする」のを目的として産業や観光が発展していく傾向にある。
その中には、街全体が色街や歓楽街といった場所もあり、このデ・リューアはその一例である。
 男たちが欲望に任せて女を食い漁る街かと思いきや、その実態はホイホイと釣られた男を魔物たち愛欲のままに食らう魔性の都市である。
「一夜の快楽」を求めて訪れた男性が「一夜」で済むことは決して無い。

 なお、こういった街は未婚の魔物が未婚の男性を手に入れることを主な目的としているが、 
既に夫を手に入れた魔物が夫婦で訪れ、淫らな娼婦や踊り子の衣装に身を包んだ自分を夫に買わせて性奉仕を愉しむという使われ方もされている。




▲書籍「ワールドガイド外伝Ⅲ コートアルフ」より、魔界の都市「アル・マール」
 デ・リューアと比べて清潔な雰囲気で、風光明媚な白亜の観光地。 
 白亜の結婚式場が有名で夫婦の新婚旅行に人気の都市だが、こういった街でもやはり魔物の街
独り身の男性観光客には、未婚の魔物のガイドを付けるサービスが行われている。
魔物に懐に潜り込む事を許した男性がどうなるかは、想像に難くない。

この「アル・マール」で、白亜の教会で式を挙げての新婚旅行は、大層ロマンチックであると魔物達に評判である。
その一方で、前述した「デ・リューア」での新婚旅行も、男の性欲を煽る衣装の踊り子に扮した自分の身体を、
欲望に目をぎらつかせた夫が弄り、ケダモノの様に犯して貰えるのがロマンチックであると、魔物達に大いに評判である。
人間と魔物の価値観の違いには驚かされることが多い。


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