バンシー
・サキュバス属 ・アンデッド型

○生息地…墓場、人里
○気性……陰気、献身的
○食糧……人間の男性の精

○血の気の無い白い肌に黒い衣を纏い、暗い陰のある美貌を宿す魔物。
 死を予兆するとして恐れられており、死期の近づいた人間の元に現れ、涙を流して泣くのだという。
 あくまでも人間の死期を予見する力を持っているだけで、死を運ぶ存在ではなく、彼女達自身は人間の死と苦しみを悲しむ、心優しい性格の魔物である。
 加えて、死の気配を漂わせる者に惹かれる性質を持つ。
 それが人間の男性であるならば、彼女達はしばしばその男性に女性として惹かれ、強い愛情を抱く事となる。
 そんな「バンシー」は生と死の女神「ヘル」に仕える種族であり、死を迎える者を想って泣く彼女達の声には女神の力が宿っている。
 その声を聞きながら死にゆく者は、女神の祝福により死の苦しみが和らぎ、死した後にアンデッドとして蘇る事となるのである。
 旧魔王時代、かつての「バンシー」は死を予見する力と、死にゆく者にどうしようもなく惹かれる性質を与えられながらも、ただそれだけの存在であった。
 愛する者の死を目の当たりにしようとも何もできず、ただ悲しみ、嘆く事しかできなかったのだという。
 現在の様な力を持つに至ったのは、そんな姿を哀れに思った女神「ヘル」が己の眷属として彼女達を迎え入れたためである。
 現代の生と死の女神の信仰において、「バンシー」は生者を不死へと導く女神の使いであり、女神が人類に与えた「死して終われぬ呪いと、死して終わらぬ祝福」の一つなのだ。

 彼女達の力で死者が蘇る際、死霊魔法によるものと同様に、人間の女性であれば容易くアンデッドの魔物として蘇る事となるが、一方で人間の男性を蘇らせる場合には、男性を男性たらしめる「精を産み出す力」を修復かつ維持するため、半永久的な魔力の補給、即ち、蘇った男性の伴侶として永遠に交わり、魔力を捧げ続ける魔物が必要となる。
 そこで用いられるのが、彼女達の声に宿るもう一つの力である。
 陰鬱でありながらも美しい彼女達の泣き声は、蘇ったばかりでおぼつかない男性の思考に劣情をもたらし、定まらない意識を彼女達へと向けさせる。
 男性はアンデッドとして蘇ると同時に、傍らで泣いている彼女達を襲い、交わる事となるのだ。
 即ち、彼女達は自らがアンデッドに導いた男性に、生贄として自らの肉体と心を捧げ、愛と快楽をもって夫の魂を永遠に慰め続けるのである。

 なお、彼女達は極めて涙脆く、人間の死の際以外でも少しの事で涙を流してしまい、その全ての涙は夫の劣情を誘い、彼女達への肉欲を抱かせる。 
 夫が悲しむ事があれば、まるで己の事の様に彼女達も涙を流し、夫の陰鬱な気分を肉欲という形で受けとめ、夫を慰める事だろう。
 また、愛する男性がアンデッドとして蘇った際にはもちろんの事、夫に愛を囁かれるなどの嬉しい事でもすぐに涙を流してしまう。
 そんな悦びの涙もまた夫の劣情を誘い、そうして夫と交われば、その悦びから涙声交じりの嬌声をあげ、更なる劣情を夫にもたらすのである。



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