ボグルボー
・ゴブリン属 ・アンデッド型

○生息地…人里、廃墟
○気性……無邪気、素直
○食糧……人間の男性の精

○動物の着ぐるみを纏う少女という可愛らしい姿だが、れっきとした魔物であり、迷える少女の魂が、ぬいぐるみに宿る事でこの魔物として蘇るとされる。
 一部地域では古来より、人形やぬいぐるみには魂が宿りやすいと伝えられているが、こと死者が生前に強い愛着を向けていたぬいぐるみ、娘の遺品と両親に大切にされているぬいぐるみ等は
強い想いと魔力が結びついて極めて魂が宿りやすい状態となり、時として彷徨う魂を呼び込んでしまうのだという。

 人間が魔物化する際、愛欲の芽生えや自覚、それを満たそうとする魔物の本能に伴い、人ならざる妖艶な雰囲気を纏う様になったり、言動や行動が自然と蠱惑的になるのが常である。
だが彼女達は、着ぐるみを脱げば人間と変わらない外見と同様に、魔物らしい雰囲気を感じさせず、見る者にただ着ぐるみを纏うだけの人間の少女という印象を与える。
 加えて、なりたてのアンデッドに見られる精の欠乏による凶暴性や意識の混濁も見られないため、ボグルボーとして蘇った後は、家族の元で生前と変わらない生活を送る者も多い。
 ただし、魂を宿す器が動物を模して作られているが故か、彼女達は「自分は動物である」という認識を持ち、時折それに基づく振る舞いを見せる事がある。
とはいえ、それは動物の習性や行動に忠実に基づいたものではなく、子供が知りえる動物の特徴をなぞらえて遊んでいるかの様な、まるで「どうぶつごっこ」といった微笑ましいものである。
 一方で身体能力の高さはごっこ遊びの範疇に収まるものではなく、熊なら更なる怪力と瞬発力、兎は聴力に跳躍力、犬は嗅覚や俊敏性と、模した動物に基づく力は動物はおろか獣人にも引けを取らない。
 
 彼女達が最も「動物らしい」姿を見せるのは異性への好意を抱いた時である。
 「動物」である彼女達にとって、特定の男性への好意は即ち、そのオスをつがいとして認識するという事であり、繁殖して子を成したいという愛欲にほかならない。
 動物だから当然といわんばかりに全身を擦りつけたり、お尻を向けて誘惑するなどの求愛行動を積極的に行う様になり、もしその求愛に獲物が応えないのであれば、魔物がそうする様に獲物に襲い掛かって組み伏せ、獣じみた「繁殖ごっこ」を行う事だろう。
 「がおー」と口に出して襲ってくる様子は、それでも「まものごっこ」をする人間の少女にしか見えないが、獲物だけは彼女達が本物の魔物であると、その身をもって教えられる事となる。
 
 なお魔物は、その身から放つ魔力、匂い、フェロモン、様々なもので目当ての男性を誘惑する生き物である。
だが、ボグルボーは身体から放たれ続けるそれらを外に放出することなく、着ぐるみの内側に溜め込んでおり、溜め込まれたそれは濃密なフェロモンとなっている。
 彼女達が着ぐるみの留め具を降ろして前を開けば、もしくは男性が着ぐるみの前を開けば、その瞬間に溜め込まれたフェロモンが放たれ、目の前の獲物の理性を一瞬にして奪い、発情した動物の様に変えてしまうのだ。
 また、彼女達の着ぐるみは、まるでそれ自体が獣の口であるかの様に大きく開き、男性に噛みつこうとすることがあるという。
 もし頭を噛みつかれてしまえば、そのまま着ぐるみの中、彼女達の胸元に頭を取り込まれ、その素肌に鼻先を押し付けて濃密なフェロモンを直に嗅いでしまう事となる。
 その威力はただ放たれるだけのものとは比較にならず、メスを前に正気を失ったオスとなり、共にケダモノの様な「ごっこあそび」に興じる事となってしまうだろう。



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