バニップ

・ラミア属 ・爬虫類型

○生息地…川や湖などの水辺
○気性……凶暴、弱気、臆病
○食糧……肉食、野生動物など。

 水辺に潜むラミアの一種で、全身が豊かな体毛に覆われ、瞳は妖しげな光を放っている。
 ラミア属の中では大柄で、怪力と共に長い尾をばねに獲物に飛び掛かる俊敏さを併せ持つ。
 その身に宿る獣性は極めて強く、獰猛なまでの生殖欲求から積極的に男性を襲う種族であるとして恐れられている。
 凶暴性を秘めた姿とは裏腹に普段の様子は不気味な程に大人しく、隠れる様に身体を水の中に潜めて過ごしている。
 それ故に、目撃した者からは「鳥のくちばしを持つ獣」や「巨大な尻尾を持つ獣」等としばしば誤認され、正体不明の「怪物」として扱われる事も多い。

 音を立てる事なく水の中を移動し、男性を見つけると、じっと見つめた後に前触れもなく飛び掛かる。
 その姿はまさに獲物を喰らい殺さんと襲い掛かる理性無き怪物の様である。
 一方で、彼女達は高い知性を備えると共に、平常時であればその獣性を抑えるだけの理性も宿す存在であり、彼女達と触れ合う事ができれば、大人しく臆病な本性も垣間見えるだろう。
 しかし、会話はできるものの得意ではない様で、特に男性と話すのは極端に苦手なのだという。
 仮に親しくなりたいと考えていても、それを言葉にできず、いざ男性を前にすると頭の中が真っ白になり、まともに喋れなくなってしまうそうだ。
 つまり、獲物をじっと見つめる姿は、男性にどう声を掛けようか悩んでいる姿であり、突然飛び掛かるのは、混乱故に自身の衝動を抑えきれなくなった事によるものなのだ。

 彼女達はラミアらしく夫の身体に蛇の下半身を巻き付け、全身を使って抱きしめる事を好む。
 自身の身体を余す事なく夫と密着させる姿には、蛇の魔物らしいオスに対する執着が見えるが、それと同時に、夫に顔を寄せて心底幸せそうにする様子は、まるで少女が大事なぬいぐるみを抱いて離さない姿の様でもある。
 彼女達の蛇の身体はラミア属の魔物の中でも特に柔らかく、魔力を帯びた体毛は、水を吸ってもふわふわとした肌触りが失われず、抜群の「巻かれ心地」を誇る。
 その身体は淫魔のものとは異なる意味でも魔性の肉体であり、彼女達に巻かれ、抱かれた者は心地良さのあまりに力が抜け、身を任せてしまうのだという。

 獣性に身を任せた彼女達との交わりは、喰らいついた怪物が容赦なく精を搾り尽す様な、ひたすらに激しく凶暴なものとなる。
 我を失った彼女達は、自身のその姿に抵抗すら感じないだろう。
 だが、そうでないときの彼女達は、夫に巻き付き抱きしめながらも、自身で行ったそれを恥ずかしがり頬を赤らめるという生娘の様な姿も見せ、交わりの際も夫の様子を確かめながら、おそるおそるといった風に腰を動かす様になる。
 だが、鋭い牙の並ぶ怪物の大口が一度獲物を咥え込めば、ただ戯れに口を閉じるだけでも致命傷となるのと同じ様に、彼女達が小さく腰を揺らせば、本人が意図せずとも、喰らい付かれた男性器に暴力的なまでの快楽がもたらされ、貪り尽されるかの様な射精へと導かれる事となるのだ。



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