「・・・標的か。」
青い髪の毛に黒い瞳の青年が、ゆるやかな山道正面から歩いてくる魔術師風の格好の人物を見てもう一度契約書と人相や特徴を確認する。
スフィアスコープ(一種の写真技術、紙に水晶玉が記録した物を移す)の顔と比べて特徴が一致。間違いない。人気のないこの山道に気分転換として散歩に出るという依頼主の情報どおりだ。
「依頼主に恵まれたな。さて。」
何事もないように彼はその魔術師とすれ違う。相手は一瞬だけ武器を持っている人物と見て警戒したが、すれ違ったのを見て警戒心を解いたらしい。
彼はその隙を逃さなかった。ベルトにつけた、自分の指よりも細いナイフを抜くと後ろを向いたまま投げつける。
「・・・!?」
相手の背中に命中し、何があったかわからない様子で居たが・・・いきなり心臓を押さえ、倒れこむ。
「・・・シェングラスでも指折りの魔術師と呼ばれた奴もこの程度か。」
彼は振り向くと、ナイフを回収し短い鞘に収める。ナイフには薄く黄色がかかっている。
暗殺に使われる毒であり、心臓麻痺と似た症状で倒れこむ。元からそんな要因のない人物相手に使えば怪しまれるが、標的は名誉で得た金で豪遊を繰り返していた身分、酒の飲みすぎなど心臓麻痺の要因はいくらでもあがる。
つまり、ナイフの傷さえ見つからなければ心臓麻痺で死んだものとしか思えないのだ・・・彼はうつぶせに倒れこんだ標的を仰向けに寝かせなおす。
「任務完了、だ。」
高級そうな装飾品や護身用武器などに手を出したかったが、すんでのところで彼は思いとどまる。
「・・・さて。」
契約書の執行人の欄に、クラウスと書かれている・・・彼ことクラウスは契約書を読み直し、何もかも成功したと確信する。
刺客といえども契約書を交わす・・・何のためかといえば報酬を支払うように仕向けるため。払えなければ身包み剥いで報酬分をいただくのは生ぬるく、依頼主を殺すことも多い。
そして契約書から自分の名前を削り、相手の頭に重ねておく。こうしておけば暗殺者の契約を破棄して殺されたということになり、名誉に傷がつき追われることも少なくなる。
基本的に刺客を裏切って返り討ちにあった事件は後回しにされる。契約を破ったゆえに自業自得、そう見られるためだ。
「・・・奮発して、旨い物でも・・・ん?」
クラウスが気配を感じ、銃を構える・・・この世界の銃は単発式であり、あまり普及した武器でもない。銃に使える加工のたやすい金属では属性を武装に収束させ、術を放つのが難しいからだ。
術を使いやすくする金属は一般的に加工が難しい。それで銃を作るとなればかなりの資金が必要となる。彼が持っているのは普通の鉄製、銃身の長い狙撃用だ。
「・・・見られたか?少々まずいな。」
ポーチからステルスケープを取り出し、クラウスは道端の段差付近まで行きケープをかぶって身を隠す。
この近辺に人がくるとなればまずい。殺されているのを見て誰か人を呼びに行っている間に退散してしまうのが上策だろう。
が・・・気配はどんどんクラウスの方へと近づいてくる。嫌な予感がしたのかクラウスは銃を構え、銃弾を装填して待機する。
「見られたわけではない、か。俺を狙う刺客か?」
彼のそんな予想も、すぐにひっくり返されることになる・・・いきなりステルスケープに例の気配がぶつかり、転倒してしまったのだ。
「うわ!?」
「・・・期待して損したが・・・どういう奴だ。」
ケープは走る邪魔になる・・・クラウスはすぐに折りたたみ、転んだ人物の顔を見ようと振り向く。
茶髪に白い肌。瞳はガラス細工のように澄んだエメラルドの色・・・案外身体は普通の大きさで細身の女性だ。が・・・腕に妙な石版が張り付いている。
「・・・使い、か。所詮気にするまでも・・・!?」
どこかの所有していたゴーレムだろう。クラウスがそう判断して立ち去るがいきなりそのゴーレムが足をつかんできてクラウスを引き倒す。
見た目以上に力が強い。襲ってきたのを見て刺客だと直感したクラウスが落とした銃へと手を伸ばすが、わずかに届かない。
ゴーレムの方はクラウスへと馬乗りになって顔を近づけてくる。クラウスは焦燥感に駆られすぐに銃を取ろうとしたが、あせってうまくいかない。
ここに長居すれば怪しまれる。取調べなどを受けては後々面倒なことになる・・・だが、ゴーレムは乗っかると首元に手をかける。
「殺す気か・・・自動人形に襲わせる悪趣味な奴が!」
何とか銃に手が届き、すぐ発砲するが・・・狙いがそれて腕の石版をえぐった程度に過ぎない。すぐにクラウスが銃弾を再装填する。
が、それだけで十分だった。ゴーレムの機能が停止し、そのままクラウスの上へと倒れこむ。
「・・・面倒だが、放置しておくとさらに面倒だ。」
クラウスは立ち上がってこのゴーレムを担ぎ上げる。明らかに銃弾が石版を抉り取る形で食い込んでいるため、刺客が居た証拠にもなる可能性がある。
刺客が関与していることを感づかれるなというのも依頼主の命令。クラウスは何とか担ぎ上げると市街地へと戻っていく。
「・・・おい。」
「挨拶だな、クラウス。またどうした?」
赤い石を砕いている鍛冶職人の所にクラウスが来る。しゃべり方からして常連客らしい。
「リムアーズ、とりあえず銃弾を抜いてこいつを売り払いたい。」
「は?人身売買・・・」
リムアーズと呼ばれた黒髪の青年がクラウスの担いでいるゴーレムを見て一瞬何かと間違えたらしいが、思い直すと分析し始める。
「って、ゴーレムか。驚かせやがって・・・」
「何かわかるのか。」
「あぁ・・・待ってろ。SE-7408、固体名ミィル・・・」
銃弾を掠めたルーン文字を見てリムアーズが情報を読み取っていく。一応術精錬の原型となるルーン文字の軽い解読程度ならできる腕前だ。
「驚いたな・・・お前、どこで手に入れた?」
「旧ナーウィシア領近くだ・・・どうした?」
「あぁ、なるほどな・・・悪ぃ、クラウス。こいつは俺の専門外だ。売りさばくにしても兵器転用には手間がかかりすぎる。」
どういうことだとクラウスが疑問を投げかける。ゴーレムといえば男女型問わずいろいろと配備され、どういう運用法でも人より数倍の力は発揮できる・・・とリムアーズから以前聞かされていたのだ。
これまでも何度か引き取ってもらったが、今回ばかりは無理だという。
「こいつ・・・用途の設定はいいんだが動力源がなぁ・・・」
「何だ。」
リムアーズはふぅとため息をつき、クラウスの質問にまったく答えずに自分の意見をはっきりという。
「気にすんな。悪いことは言わねぇから捨てるか持ち主探して返すことだな。」
「・・・それがよさそうだ。持ち主に返してくる。情報は?」
「型番から所属はある程度確認できる。後は情報収集してみな?とりあえず預かっとくからな。」
悪いなとクラウスが答える。ミィルとか、こいつを持っていくのは正直人よりは軽いといっても疲れる。
それに行きつけの酒場で入らぬ誤解を招きかねない。それほど人に良く似せて作られている上にきれいな顔立ちだ。
「で・・・お前さん、捨てるってことは考えないのか?」
「さすがにな。標的でもない奴・・・まぁ人形だが、捨てる気はしない。」
「じゃ、探してきな?」
了解とクラウスがうなずき、鍛冶屋を後にすると路地を歩き酒場へと入っていく。特に酒飲み目的でもなく、情報収集だ。
依頼や情報の聞き込みのために傭兵や刺客が行きつけの場所があり、クラウスもそこを利用していることが多い。
「・・・ナーウィシア解放軍が始動だって?」
「ああ、王族の娘が見つかったらしいし戦力も整ったという噂だ。俺も見てきたが可愛いな・・・ローパーだけどな。」
「マジかよ・・・ま、ナーウィシアはそんくらいがちょうどいいんだろうけどな?」
「違いねぇな。」
笑いながらナーウィシア解放軍の噂をしている傭兵を見過ごす・・・魔物を魔物とではなく「種族」と見ていたナーウィシアと排斥すべきと見ていたシェングラス。
この2国が戦争を行い、ナーウィシアは数箇所の自治領を残しシェングラスへと占拠されてしまった・・・もっともシェングラスの魔物排斥などの風潮をナーウィシアの国民が潔しとするはずも泣く、軋轢は耐えなかったのだが。
戦力的にナーウィシアの方が圧倒的優勢で戦略も上手かったが、シェングラスは魔物排斥に同調する諸侯をいいタイミングで裏切らせ、ナーウィシアを殲滅し現在に至るというところだ。
「お、兄貴。」
「クリスか・・・また何をやっている。」
偶然見かけたのは同じ刺客でありながら盗賊兼情報屋をやっているクリス・・・クラウスの妹でもある。
相変わらずかとクラウスがため息をつきながらクリスを見る。本当は心配してもいるのだが、そんなそぶりは見せずそっけない口調で話しかける。
「ん、ちょいと依頼主と標的の過去洗い・・・って、そのルーン文字・・・」
「どうした?」
持っていたルーン文字の紙をみて、クリスがあぁとうなずくとため息をつく。情報屋故に知識の量は半端ではない。ルーン文字の解読すらできるほどだ。
「今日殺された錬金術師のじゃん。」
「今日・・・だと?」
「そう。旧ナーウィシアでも結構有名だった奴。なーんか血色悪くて怖かったけど腕は一流でさ。戦争で恋人殺されたって奴。」
悔しそうにクラウスが舌打ちをする。それでは返す相手が居ない・・・つまりあれは廃棄処分にしろといっているのと同じようなものだ。
「お前、何故そのことを?」
「あいつの情報提供したの私。シェングラスの同業者が仕事が入ってこないのを逆恨みで、その下準備だって。」
その錬金術師を無性に殺して二度と目も向けられないような姿にしてやりたいとクラウスは思ったが、心の中身だけにとどめ冷静に話を聞く。
「そうか。」
「何でそれ持ってんの?つーか何で・・・」
「奴の作ったゴーレムとやらに襲われた。腕を吹っ飛ばして機能停止させたが、引き取り手が居ないようでな。」
参ったねぇとクリスが半分冗談交じりの笑みを浮かべて相槌を打つと、肘でクラウスを小突く。
「いっそ引っ付いちゃえばどーよ。」
「ふざけるな・・・何故。」
「独身で寂しい兄貴に最適なんじゃない?そい・・・ぶっ!?」
脳天からクラウスに肘打ちを喰らいクリスがテーブルにたたきつけられる・・・周囲の視線が一瞬だけ集まるが、またすぐに喧騒が戻ってくる。
「酷いってば・・・ほんの冗談なのに。」
「ふざけるな。」
「でもさ、何で捨てないのさ?兄貴さ、「他人など所詮他人、生殺与奪は自分で決めろ」ってよく言ってたのに。」
それを言われ、クラウスは捨てるという思考がまったくでないことにようやく疑問を抱く。
街中に放置しておけば誰か持ち去っていくだろうし、闇市で売ろうと思えば結構高値で買う奴もいるだろう。
「まして人形じゃん。人の命奪えて人形壊せない刺客なんてあり?」
「む・・・」
「私も捨てたほうがいいと思うな・・・ま、家事が何にもできない兄貴ならメイドとして雇う手段もありだけど?何で動くか知らないけどその手の動力源なら金で買えるでしょ。」
そういえば自宅はほぼ散らかりっぱなしで食事も購入したものばかり。選択も何もできないというのが自分だと改めてクラウスは思い返す。
「だが動かないぞ?」
「兄貴の名前のルーンくらい私程度で刻めるよ。役目もね。まぁ性格と固体名は無理だけどさ。そうすりゃとりあえず動くでしょ。後は知り合いの鍛冶職人でいいでしょ。」
「どこで覚えた?そんなもの・・・」
「ん、この前の依頼で罠かかってさ・・・それが酷いトラップで、自慰行為強要でおまけに盗撮なんて代物だから・・・悔しいからその手のもの勉強したの。」
まったくこの妹は・・・とかそんなことを思いながらクラウスは預かっている鍛冶職人のところへと戻る。
ひょっとしたら自分を軽く越えるような人物なんじゃないだろうかとか思ってしまう。射撃や暗殺の腕前なら負ける気はしないが、それ以外は軽く上回っている。だからあまり会いたくはないようだ。
「・・・すげーな、お前の妹。」
「俺も恐ろしく感じるときがある。時々な。」
呆然とリムアーズがその作業を見守っている中、クリスがふぅと一息ついて使っていた道具をしまう。
石版を取替え、そこに命令を細かく刻み込んでおいたらしい。どうやら家事手伝いに関することで、前の命令は「明らかに不要」だったのですべて削除したという。
「終わり。まぁ動力源はあとちょいで切れるから自宅に行ったら補給してあげなよ?」
「あぁ、わかった。」
自宅にそれらしいものがあったのかどうかとりあえず探してみるかとクラウスが考える。散らかっているから探せば何かあるだろう。
どうせ妹のことだ、ここに来る前に自分の家によって持ち物をあるものほとんど確認でもしておいた程度にしか認識していない。
「ほら、挨拶は?」
「あ・・・ご主人様。」
頭を下げるミィルをみて、クラウスはやはり何か違うものを感じたらしい。妹であるクリスには感じない別のものだ。
服装はぼろぼろのローブからこっちのほうが趣味だろうというリムアーズの提案でメイド服に着せ替えたようだ。石版も隠れるため、見た感じ本当に16歳くらいの少女にしか見えない。
「クラウス・・・だ。まぁ自宅まで案内するからついて来い。」
「了解です、ご主人様。」
「・・・いや、頼むから呼び名に「ご主人様」はやめろ。」
一瞬だけミィルに鋭い目線を向けたあと顔を背けるが、クリスが前に出てきてクラウスの頬が赤いことをはっきりと見て取る。
「何なに?兄貴、まさか年下からご主人様呼ばわりで照れてやんの?」
「ちょっと待て。」
「お似合いだな、確かにこのコンビは。」
「待てリムアーズ!俺はそんな趣味・・・」
リムアーズに怒鳴りつけようとして、クラウスがふとミィルを見てしまう・・・他に目をやろうとしたが、ぼーっとした表情で見つめられ首がまったく動かせない。
「あるだろう。絶対。このメイド萌えの変態が。」
「黙れ、これ以上言うと次から貴様のところには二度と来ないぞ・・・いや、銃弾を脳天にぶち込むほうが先か?言って置くが俺はメイドに興味などない。」
「わかったわかった、それ以上俺は何も言わないから銃弾だけは勘弁な。」
さすがに強い気迫で迫られてはリムアーズも引かざるを得ないが、なれているクリスはそんな様子を見ながらまだにやけている。
「まったく、こういうことに関しては純粋なんだからなぁ。刺客クラウスも形無し。」
「・・・行くぞ、ミィル。」
「わかりました、ご主人様。」
結局プログラムどおりかとクラウスがため息をつくと、クリスがクラウスへと呼びかける。
「ああ、そいつ自動的に動力源を補給するようにセットされてた。」
「いい傾向だ。」
満足げにクラウスはうなずく。人がいる生活にはいずれ慣れてくる・・・むしろ見るに絶えない自宅の掃除だけでもかなり役立つ。
ごみ屋敷・・・とまでは行かないがクラウスの家はかなり散らかっていることが多い。それを一掃してくれるだけでも十分だ。
「さて、早速頼む。」
都市部にある廃屋の2階にクラウスが住み着いている・・・以前の住居人が捨てたごみなどが蓄積しているようだ。
「あ、あの・・・ご主人様。」
「どうした。」
「補給してもいいでしょうか・・・?」
ああ、とクラウスがうなずくとミィルは早速隣の寝室へと入っていく。クラウスもその後を追うが特にそれらしいものは落ちていない。
ゴーレムを動かす動力源、そんなものは落ちていない・・・するとミィルが扉を閉める。
「・・・ここにあるのか?」
「はい・・・失礼します。」
疑問符を抱いたとたん、クラウスはいきなりミィルにベッドへと押し倒されてしまう。
「目の前・・・です。ご主人様、失礼します。」
「何!?」
丁寧にミィルが服を脱がせ、後ろへと放り投げていく・・・それから自らの服も脱ぎ捨てると身体を押し付けてくる。
触ってみると、肌とは感触が違うとクラウスが実感するが・・・そんなことお構い無しにミィルは舌を絡ませてくる。
「・・・お前の動力は何だ。いったい・・・」
「私の動力は人間の分泌液・・・ことに精液です。」
「ちょっと待て・・・リムアーズ、何故説明しなかった。待て、これから襲うとでも・・・!」
リムアーズへと相当な恨みの言葉を吐き出しながら、クラウスはいつの間にかミィルのなすがままとなっている・・・無論抵抗しようと思えば抵抗も出来る。
すでにミィルは下着も脱ぎ捨てると、ゆっくりと舌で身体を嘗め回していく・・・適度にやわらかく人と同じくらいの硬さだろう。無論唾液はでないがそれ以外は変わりはしない。
こういう目的に最初から設計されている・・・肌の柔らかさなどはなるべく人に近づけているが、さすがに質感まではどうも出来ない。それでも初体験であるクラウスにはかなり刺激が強いものとなっている。
「興奮してますね・・・ご主人様ぁ・・・」
「ミィル・・・」
ここまで来たら仕方ないだろうか・・・クラウスは半分諦めたムードでありながら、心臓の高鳴りを抑えきれずにいた。
かなりの至近距離でミィルを見つめ、自分の好みに合致していることにいまさらながら気づく。恋人にしたい人物の理想像にかなり近い。。
「・・・悪い、突き上げるぞ。」
「あ・・・ご、ご主人様ぁっ!」
少々長い愛撫へとじれたのかクラウスは自らを彼女の秘所へと突き出し、何度も腰を降り始める。
「ミィル・・・・離れるな・・・!」
「は、はいぃ・・・ご主人様・・・ぁ!」
かなり狭い、故に強く締め付けられる・・・喘ぎ声まで再現とは良く出来ているのだが、クラウスはそれに突っ込む様子もないしミィルも当然のこととして受け入れている。
「入って・・・ます・・・!ご、ご主人さまぁ・・・」
「・・・く・・・そろそろ・・・イく・・・!」
とたん、クラウスの意識が一瞬にしてはじけ飛ぶ・・・ミィルのナカに精を放ち、ぐったりとしてしまったがミィルはまだ続けるつもりらしい。
「もう一度、行きますよ?」
「・・・あぁ、わかった。」
ミィルは淡々と・・・そしてクラウスは疲労感を抑えながらも半分嬉しく続けていき、夜も一気にふけていく・・・
「・・・ん?」
たいてい壁を背にクラウスは寝ることが多い・・・今日も同じく壁を背に寝ているが、ベッドから見える光景はまったく見違えていた。
ゴミはあらかた片付き、それどころかフローリングの床や家具などがつるつるに磨かれている。
「・・・何?」
昨日までなかった洋服ダンスがベッドの近くにあり、中には服一式がかけられている・・・クラウスが服を着て銃を持ちリビングへと出ると、大量の料理が並んでいる。
「おはようございます、ご主人様。」
「・・・ん、食事まで作ったのか・・・」
クリスの差し金だろう、ちゃんと自分の好物まで理解しているらしく量こそ多いが苦にはならない。
ミィルに食料は要らない。動力源だけでちゃんと行動は出来るもの・・・クラウスはふぅとため息をつく。
「・・・武器は何が使える?」
「あ・・・はい?とりあえず何でもかまいません。」
あぁとうなずくと、クラウスは使えそうだと感じる・・・刺客をやるときに相棒に使うことも不可能ではないという結論に至る。
適当な武器でも買い与え、とりあえず段取りなどを教え込めば十分だろう・・・クラウスはミィルを前線に出す計画を練り始める。
終わり