ファントム

・ゴースト属 ・アンデッド型

○生息地…墓場、廃墟
○気性……陽気、冷静、好色
○食糧……人間の男性の精

○死して肉体を失った人間の魂のうち、一際強い精神力を持った魂が魔物の魔力と結びついて生まれる「ゴースト」の上位種で、アンデッド達の王国である「不死者の国」では貴族階級として扱われている。
 また、ゴーストが幾度となく夫と交わって精を啜り、魔力を蓄え続ける事で、このファントムに変化する事があるという。
 その肉体は魔物の魔力で形作られた霊体であり、建造物の壁や天井をすり抜け、どこからでも現れ、人間の男性へと襲い掛かる。
なお、生まれつき実体化するだけに十分な魔力をもっているため、彼女達が望めば自由に物体や人間に触れ、または触れられる事ができ、問題なく男性と交わる事が可能となっている。

 一見して、貴族らしい気品のある堂々とした佇まいの彼女達だが、淫らな思念に満ちた存在であり、その思考はゴーストと同じ様に人間の男性との淫らな「妄想」にまみれている。
 ぼんやりとした思考の中で男性との交わりの妄想に振り回されがちなゴーストとは異なり、彼女達の妄想はただ交わるだけのものではない、まるで戯曲の様な男性との物語となっており、明瞭とした意識の中で夢想し、愉しんでいるのだという。
 そうして常に自身の世界に浸っているためか、彼女達の振舞いは、まるで役者の様に仰々しく、芝居がかったものとなっている。

 ゴーストと同様に、憑りついた他者と思考を共有し、自らの妄想を相手の頭の中へと送り込む力を持つ。
 気に入った男性を見つけると、これにより自らの夢想の世界へと引きずり込んだ上で愛を囁き、交わりへと誘うのである。
 この力は、妄想を送り込まれた者の現実と幻想の境界が曖昧になり、自身が彼女達の夢想する物語の登場人物であると思い込んでしまう事もある程に強く、時として狙った男性のみならず、周囲の者すべてが彼女達の妄想に巻き込まれてしまう事すらあるという。
 また、彼女達の極めて強い思念は頭の中だけでは留まらず、彼女達の作る物語に即した幻影を生み出し、彼女達が望む通りに現実を演出してしまう。
 それにより、その場の空気すらも自在に操り、彼女達の作りだす雰囲気に呑まれた男性は、彼女達との出会いが運命的であり、結ばれる事が必然であるとすら感じてしまうのだという。
 より深く彼女達の物語に取り込まれた男性は彼女達と共に、時として許されざる恋をした騎士と姫君となり、また時として家同士の争いに引き裂かれつつある恋人達となり、彼女達の描く脚本の通り、物語の果てに結ばれ、交わる事となる。
 演目を終える頃には、既に男性の身体には彼女達との交わりと快楽の記憶が刻み込まれ、夢想の中であっても彼女達と育んだ愛情はたしかな実感を伴って消える事なく残り、彼女達と夫婦となる運命から逃れる事はできないだろう。

 「不死者の国」のアンデッド達の間では芸術文化が盛んで、王国にはいくつもの劇場が存在する。
 劇場にはファントムが潜み、アンデッド達による「男優の居ない劇団」と共に、迷い込んだ男性を取り込もうと待ち構えているのだという。



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