フェニックス
・ハーピー属 ・鳥人型

○生息地…火山地帯
○気性……冷静、好色
○食糧……炎、火の元素

○燃え盛る炎の翼を持つハーピーの一種。
 「不死鳥」とも呼ばれ、炎を喰らう事で膨大な魔力と火の元素をその身に宿し、死しても蘇り永遠の時を生きる。
 知能が高く思慮深い魔物であり、加えてその姿の神々しさから一部の土地では神の使いとして扱われている。
 個体数が極めて少なく、火山地帯の奥地を住処としているため人前に現れる事は滅多に無い。
 また、他とは違う時の流れを生きているためか、人間、魔物問わず他者に対する関心が薄く、気だるげで素っ気ない素振りを見せる。男性に対してもそうであるため、仮に出会ってしまっても襲われる危険性は少ない。
 燃え盛る羽根には強い生命力が宿っており、死にゆく者をも救う霊薬の材料となる。他者への関心が薄い彼女達だが、敵対的というわけでもないため、礼節を尽くせば譲り受けることもできるだろう。

 一般的に死した魂は死者の世界へと向かい、その後に別の生命として現世に蘇るとされている。
 だが、彼女達はそこから外れた存在であり、長い時を生きた後に寿命を迎えると、その身を燃え上がらせ炎に包まれながら幼鳥の姿で再生する「転生」を繰り返す。その際には彼女達のつがいとなった男性もまた、共に転生の炎に巻かれて新たな生を迎える。
 彼女達にとって、つがいの男性は同じ時を共に生きる唯一の存在である。他者への関心が薄い一方で夫に対する執着は極めて強く、後述する彼女達の本来の姿もまた、そんな夫にのみ見せるものとなっている。
 幾度となく生をもたらす炎の力は、宿る彼女達の身体を際限なく活性化させ、身を焦がす程の繁殖欲求に苛ませる。それ故に彼女達は常に身体を火照らせムラムラとしており、ふとした事ですぐ夫と交わりたくなってしまうのだという。
 だが、彼女達はその欲求を抑えるべきものとは考えておらず、むしろ夫へと向ける視線は明け透けな程に熱っぽく、積極的に夫との繁殖を愉しもうと身体を絡めて誘惑する。 
 彼女達は夫と身体を重ね、共に快楽に耽る日々を何よりも好み、繰り返す長い時の多くをそうやって過ごしているのだ。
 夫への執着と愛欲は転生する度に強まり、それは転生したての幼鳥の姿になったとしても収まるものではない。
 転生は炎が最も強まる時、即ち、交わりの最中に行われ、繋がったままのつがいは快楽の中、転生の炎に包まれる。
 転生を経て互いが幼い姿になったとしても目の前のつがいとの交わりをやめられるはずもなく、つがいの新たな生は生まれ変わった互いの幼い身体を貪りあう快楽と悦びからはじまる。
 そしてその後も成長を続け、少しずつ変化していく互いの身体を、毎日、重ねることで確かめあう倒錯した日々を過ごす事となるのだ。

 これ程の性欲を宿す彼女達が、人前に出る際に理知的であるのは、それ以外のほとんどの時を夫と交わり繁殖欲求を満たしているからに過ぎず、そうでないのであれば、夫との交わりに耽ったまま人前に現れる事が無いからである。
 また、襲われる危険性が少ないというのも、その生態からフェニックスは繁殖の周期が長い傾向にある魔物の中でも輪をかけて長く、新たに生まれる未婚の若い個体が少ないため、結果的に人間の前に現れるのがほとんど既に夫を得ている個体となるためである。
 ただし万が一、男性の前に現れたフェニックスがつがいを持たない個体であった場合、気だるげで素っ気ない素振りは変わらずとも、獲物には長い生を共に繰り返す伴侶に対する、明け透けなまでに熱っぽい視線が向けられていることだろう。




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