「・・・集まってくれて感謝する。」
「どういうことだ?」
グリレ領でも有名な刺客、傭兵、仲介人の類・・・彼らが酒場の秘密にしている薄暗い地下室に集まっている。
その中にラヴィンも混ざっている。無論彼も仲介人としては有名であり、集まってきたということだ。
「・・・議題はいくつかある。まずはシェングラス政府から解放軍絡みの依頼を禁止、さもなくば酒場の閉鎖を通達する文書が届いた。」
議長らしい灰色の髪の毛にモノクルをつけたオールバックの老人っぽい人物が文書の写しを各員に回す。早急にまわしているのは黄緑色のショートに蒼い瞳の少女・・・ワーラビットとか言う種族で、議長の従者だと言う。
「これは?」
「なんとも慇懃無礼ですね。実行支配力も無い旧世代の首脳もずいぶんと高圧的に出てきたものです。」
かくいうお前が慇懃無礼だろとラヴィンが隣の仲介人・・・蒼の髪の毛に黒い瞳の人物を見る。
「しかし無視するわけにもいかぬな。グリレ領近辺にシェングラスの軍勢が展開している。」
「解放軍の依頼は撤廃しては?どうせ魔物絡みも多い、評判は落ちますよ?」
少々若い仲介人が意見を言うが、反対側のテーブルに座っている刺客・・・クラウスが首を振る。
「無謀だな。解放軍の依頼は4割にまで増えている。こちらはそれで食っている上に解放軍の依頼は種族関係なしに受けられる。」
「種族・・・な。あんな魔物風情、何故気にかける必要がある?この世界を食い荒らそうとしているのだぞ?」
そういうのは大規模な傭兵部隊「クルヴェット」を率いる団長だ。白髪に金色の瞳であり、年齢もかなり若い方だろう。魔物嫌いでも有名ではある。
が、蒼の髪の毛の仲介人が相変わらず無礼な口調で返す。
「いまだに現実を見据えられない旧世代の異物はこの際ほうっておきましょう。議題を優先しなければ。」
「貴様!」
「よせ、ルクレール・・・クルヴェット団長の威信を落とすな。ラフィエル、お前も自重しろ。」
議長が厳かな口調で2人をなだめ、2人とも一礼して黙り込む。すると紺色のロングヘアーの女性が発言する。
「ルフトゲヴェーア代表として発言させてください。今回の一件は傭兵に対する自由の侵害と見てもいいと思います。」
「うむ。リューン・・・それで?」
「ここは一戦交え、私達の実力を認めさせては?ルフトゲヴェーアは自費で戦備を整え戦う予定。これはもはや解放軍とシェングラスの争いではなく、私達の自由を奪いたいシェングラスと私達の争いかと。」
古の傭兵シルフィが作り、今ではウィングルア最大の傭兵部隊として君臨するルフトゲヴェーア・・・やはり「自らに忠を尽くせ、剣は自らのために振るえ」を地で行く連中だと誰もが納得する。
「シェングラス寄りの依頼はどうする?」
「彼らは私達を恐れて、先に手を打ってきた。私達がいなければ困るのはシェングラスも同様。恐れることはないかと。」
なるほど、とルクレールもうなずく。シェングラスよりとは行ってもやはり傭兵であり、自由に振舞うほうがいいようだ。
「こちらから文書で通達するべきだろう。「傭兵の自由を奪う権利は無い。断行するのであればルフトゲヴェーア等の傭兵部隊も決起する」と。」
ラヴィンの提案を受け、議長が採決を取る・・・一部を除き、圧倒的多数でシェングラス政府と対立姿勢をとることに決定、次の議題に移る。
「次だが・・・隣国の大陸から傭兵部隊などと言う名称が物騒だからギルドやらそういう名前に統一してはどうかという提案が着ている。」
「反対だ。生温い。敵を傷つけあい、殺しあう。その事を忘れた生半可な連中と一緒に仕事はしたくない。」
真っ先にルクレールが発言すると、ラヴィンもそれに同調するかのようにうなずく。
「無論だ。ウィングルアでは危険度の高い依頼が多い。それこそ生死を問うような、危険の大きい作戦だ。名称変更するとイメージが優先して危険すぎる。」
「あくまでも生死をかけるのが傭兵だ。冒険者などという生温い隣国の連中と同列扱いは俺も困るな。」
クラウスもはっきりと意見を述べ、ルフトゲヴェーア代表のリューンやラフィエル、他の仲介人なども同意する。
この議題は却下。そう決定するとクラウスが何かを感じたか立ち上がり銃を構える。
「な、血迷ったか!?」
「伏せろ!」
全員がとっさに伏せるとクラウスが銃を発射・・・天井の隅にあった小さい宝石が砕け散る。
クラウスが残骸を拾い、それをテーブルの上に出す・・・術で加工された宝石、おそらく監視用の盗聴器だろう。
「軍が先に動くはずだ。解散して明日話し合うぞ。」
「一体誰が?」
「それはこいつだろうな・・・シェングラス政府の犬だ。」
例の若い仲介人をルクレールが首をつかみ、槍を突きつけている・・・おびえた様子で仲介人があわてている。
「う、裏切ったのか!?」
シェングラスの依頼を受けることが多いルクレールを仲介人は信頼していたらしいが、ルクレールは怒りを隠す様子も無く静かに答える。
「俺はシェングラスの依頼を受けることは多いが、傭兵の自由な立場があってこそだ。自治を奪う貴様らを許してはおけんのでな・・・どうする?」
「殺さないほうがいい。後で身体に聞くことが山ほどある。」
リューンが冷静に応えると、ルクレールはそうだなとうなずき槍の柄で殴りつけて気絶させる。
すると、メイド服を着た茶髪の女性・・・基ゴーレム、ミィルがクラウスに報告してくる。
「シェングラス正規軍、酒場を包囲してます!」
「傭兵は?」
「全員退避した模様・・・建物に進入した人物はいません。」
そうかとクラウスが応える・・・が、後ろを見てどうするべきか迷う。傭兵部隊の長や仲介人はいいが、議長がかなり老齢で脱出に手間取りそうだ。
が、議長は落ち着いて指示を出す。この議長は昔ナーウィシア軍の参謀だったという話だ。
「全員屋根の上から撤収しろ。一応ハーピー達に伝令を出して傭兵部隊の軍勢と解放軍に通達はしたが時間がかかる。ここに立てこもるのも難しいだろう。」
「議長は?その身体では・・・」
リューンが気遣うが、先ほどのワーラビットが議長を背中に乗せる。
「私が何とかする!お気遣い無く!」
「メイ、いつもすまんな・・・頼むぞ。」
議長がメイの背中に捕まると、いきなり正面の扉が爆発しシェングラス正規兵が突撃してくる。
すぐにクラウスが銃を構え正面の1人めがけ射撃、シェングラス兵が倒れこむと他の兵士は距離を置いている。
「食い止めるだけの時間は稼ぐ。先に逃げろ。」
「お供します、ご主人様。」
ミィルもフレイルを構えなおすと、槍や剣を持って突撃してくるシェングラス兵をにらみつける。
悪いなといって他のメンバーは二階へとあがっていく。クラウスもただ死ぬつもりでもなくそれほど議長や他のメンバーも重要であり、ここで食い止めればさらに名前に箔がつくというものだ。
「・・・さて、牙を抜かれた兵士はどこまで戦える?」
「早く!こちらへ!」
リューンとルクレール、ラヴィンらが屋根の上を先導しメイも少々遅れつつ議長を背負いながらついていく。すでに夜で足元も暗く、危険な状況ではある。
が・・・それでももう遅かったとしかいえない。シェングラス兵も屋根にあがると手槍や弓を持ち包囲する。
「そうそうたる顔ぶれですね・・・ルフトゲヴェーア、クルヴェットの二大傭兵部隊に・・・彼らをまとめる「議長」まで。」
「シェングラス第1軍司令官・・・フェルア!」
リューンが見慣れない異国の剣、フィランギを構えて牽制するがフェルアは笑みを隠そうともしない。
水色の髪の毛に赤い瞳、シェングラスの紋章が入ったマントの下に灰色のローブを着込んでいる。
「貴様・・・まだ生きていたとはな。」
議長が鋭い瞳でにらみつけるが、フェルアはやれやれと言った様子で侮蔑の視線をむけ応える。
「私のかつての好敵手も、こうなっては形無しですね・・・年月とは恐ろしいものです。相変わらず。」
「何をするつもりだ・・・」
「少々狭い部屋に移っていただくだけですよ。武器を捨ててください。さもなくば私達と一戦交えますか?」
赤い刀身のレイピアを引き抜き、フェルアが構えなおす・・・それに意を決したのか、ルクレールが槍を握り締める。
「貴様ごときに自由を奪われるか!」
ルクレールがフェルアめがけつきかかるが、突然のように全身に電流を浴び、絶叫して倒れこむ。
「雷の壁「ライトニング・ウォール」・・・貴方程度で突き破れるはず無いでしょう?まだそれでも抵抗を?」
「・・・!こんなことをしてシェングラスもただで済むとは思わないことね!」
リューンがフィランギを構えるが、フェルアはすばやく近づくと一瞬でフィランギを払いのけ強い光をレイピアに収束させる。
「ただですむんですよ・・・これが。」
突然のように閃光が放たれ、リューンへと直撃し吹き飛ばされる・・・すぐに立ち上がりリューンはフィランギを振りかざすが、フェルアがレイピアで払いのける。
すかさずフェルアが膝蹴りをリューンに食らわせて倒し、レイピアを突きつける・・・完璧にリューンの敗北だ。
「次は誰です?」
「分かった、おとなしく降伏だ。叶うわけが無い。」
ラヴィンがそんなことを平然と言うが、内心ではかなりあせっている・・・敵はルフトゲヴェーアの部隊長を軽く倒してしまうほどの腕前だ。
それほどの相手と戦ってこの面子で勝ち目があるとは思えない。ルクレールも気絶してしまっている・・・おとなしくしたがうしかなかった。
「・・・フェルア。私の従者の安全は保証してもらうぞ。」
「かつての好敵手の願いです・・・同じ牢に入れておきますよ。兵士・・・彼女を護送中に殺したり危害を加えたりしたら私が殺します。」
魔物ではなく彼女・・・その言葉に気になったリューンがフェルアに訊ねる。
「あんた・・・シェングラスの人間なのにどうして魔物を!?」
「何故でしょうかね・・・無駄話はしない主義です。兵士、全員連行してください。武装解除を忘れずに。」
「はっ!」
白い鎧をまとった・・・それこそ聖職者、聖騎士と呼ぶにふさわしい兵士が傭兵会議に参加した面々を引っ立てていく。
フェルアは満足げに作戦が推移していくことにうなずく・・・すると、兵士が傷だらけで報告に来る。
「・・・申し上げます。クラウスおよび従者に撤退されました。第4部隊全滅、第5、第6部隊も半数が死傷。相当な被害です。」
「やむを得ませんね。それよりクラウベル領への道を空中、地上問わず封鎖してください。彼らが向かうとすればそこです。」
「はっ!」
兵士が直ちに命令を伝えるために屋根を降りていく・・・余計な犠牲は仕方ないかとフェルアは思ったが、あの刺客は後々邪魔になりそうだ。
「一斉にやられてたのか?」
「らしい。」
ナーウィシア自治領、クラウベル・・・そこの酒場は先日のグリレ領で発生した事件の話で持ちきりだった。
複数の傭兵、および傭兵部隊の一斉検挙。罪状は国家反逆罪。明らかに全員をこれで捕縛するのは無理がある。
そんな中、解放軍の一部隊長であるシュナイダーは総司令官のレクシスと何度も議論を交わしている・・・紺色の髪の毛に黒い瞳の、少し若い部隊長だ。
「一軍を率いて直ちにシェングラスの部隊から奪還しましょう!議長は我らに尽くしてくれた・・・その恩を返さなくては!」
「無謀だ、シュナイダー。グリレ領を封鎖しているのだぞ?」
「連中はイーゲル領に逃げ込む。だから強襲して一気に畳み掛ければいい!すでにリファが上空監視をしているなら、位置は分かるはずだ!」
ナーウィシア解放軍伝令でありハーピーのリファ・・・彼女が上空から監視し遠隔通話術で解放軍と逐一連絡を取っている。
今全面戦争になるのは避けたいが傭兵部隊を味方につけられるという利点は大きい。恩を売っておけばこれからの戦局はかなり有利に進むはずだ。
「よし・・・わかったが情報収集は怠るな。」
了解、とシュナイダーがうなずく。人は結構多いが誰も聞いている様子も無い。クラウベル領で最大級の酒場「春風亭」。ここでは解放軍よりの兵士が集まることが多いのだ。
人いわく「魔界の扉」、またある人は「唯一残ったナーウィシア」など人によって呼ばれ方はさまざまではある・・・人も結構多い。
解放軍がらみで最近はいつもよりも人が多い。彼らの依頼を受けるために人が殺到しているようだ。
「・・・ところでだ。今度も傭兵部隊なのか?」
「俺の直轄部隊を使う。傭兵は確かに使いやすいが行軍速度が遅い・・・今回のように強襲をかける依頼にはむかない。」
レクシスの部隊はとにかく動きがいい・・・ハーピーと人の混成部隊であり空と陸上から一気に強襲を仕掛けるのを得意とする。
シュナイダーも同じ強襲部隊担当。こちらは特に種族は指定していない・・・2人の部隊はラヴィーネとも呼ばれる解放軍きっての精鋭部隊だ。
ラヴィーネと呼ばれるナーウィシア解放軍の司令官直轄強襲部隊。他にも3部隊ほど編成されていて今回の作戦に全員連れて行く予定だ。
「シージュには?」
「遅くなると伝えた・・・幾らなんでも今回の作戦ばかりはシージュの同行は不可能だ。強襲して撤収する作戦だ。迅速にやらなければ不可能だし、ナーウィシア軍の関与は最低限に抑えたい。」
「了解だ・・・早く済むといいがな。で、敵軍の位置は?」
「イーゲル領市街地北。そこに陣営を敷いて休息している・・・おそらくイーゲル領内だから明日まで休むだろう。今からなら1時間で到達できる。」
早いな・・・とシュナイダーは思ったが強襲部隊にとって出撃時間が今すぐということは日常茶飯事に近い。
むしろそのための部隊だ。迅速に展開して撤収できる、精鋭部隊。傭兵部隊すらしのぐ主力軍・・・その編成が必要とレクシスがシュナイダーなども招いて作った精鋭部隊なのだから。
「行くぞ。解放軍の部隊は出撃だ。」
「遅れるな!進撃するぞ!」
春風亭外に出るとシュナイダーとレクシスが部隊を召集。遠隔通話術なども使い部隊のメンバーがその声を聞くと30秒以内に集まる。
「目標はイーゲル領内市街地北、行くぞ。30分でつく。」
「いいか、遅れた奴から置いていく。行くぞ!」
シュナイダーとレクシスがむちゃくちゃとも言える指示を出すが、部隊全員が武器を掲げ歓声を上げるとそのまま走っていく。
強襲部隊ゆえに長距離の強行軍は慣れている。1時間かかる距離を30分程度で突破するなどたやすいことだ。
深夜、シェングラス軍陣営では複数の部隊が警備に当たっていた・・・無論ルフトゲヴェーア、クルヴェットなどの部隊の襲撃に備えてのことだ。
到着は明日あたりと情報を得ているため、警備はゆるい・・・ルフトゲヴェーアもクルヴェットも部隊は各地に展開し、召集に手間取るためだ。
「・・・なんてことは無いな。敵司令官は?」
「フェルア・・・シェングラス第1軍司令官だが本国への報告のため開けている。副官のうわさは聞かない。たいした奴でもないだろう。」
陣地を見下ろせる場所にラヴィーネ部隊・・・レクシスとシュナイダーを先頭にした部隊がいる。
坂を下ればすぐに陣地に到達できる・・・こういう場所には見張りを立てておくのが常道だが、それもしていないところから見てレクシスは敵将は凡庸な奴だと推測する。
「じゃあ、早く終わりそうだな?」
「そうだな・・・こっちの姿は見えていないらしい。」
月は雲に隠れ、こちらの部隊を照らすものは何も無い。見張りの兵員も酒混じりであまり対応力に優れていない。
そう判断すると、レクシスが真上にいるハーピー達に指示を出す。指示を受け取ったハーピーが一斉に散会し、陣地各部分に炎属性術を放つ。
「・・・行くぞ、シュナイダー。」
「ああ・・・全軍突撃!声は立てるな!」
陣があっという間に火に包まれ、その隙にラヴィーネ部隊が突撃・・・一斉に散開するとろくな武装もしていない兵士達を切り捨てていく。
「な・・・なんだ!?」
「敵襲だ!て・・・ぐはっ!」
敵の襲来を叫ぼうとした兵士がシュナイダーが振りかざすグレイヴで真っ二つに切り裂かれ、部隊は陣地奥へと進んでいく。
夜間のためあまり対応も出来ていない。何があったかも分かっていないようだ。
「傭兵部隊の襲撃か!?」
「ええい、囚人を早く中央政府に護送しろ!準備は整っている、急げ!」
突然の強襲にもしっかりと対応している部隊がいて、すぐに囚人を運ぼうとしている・・・レクシスとシュナイダーは乱戦の中を駆け抜け部隊のいる場所まで到達する。
「その馬車だが・・・待ってもらおうか。」
「フェルアの直轄部隊か・・・覚悟しろ!」
周囲にいるのはレクシスとシュナイダーのみ・・・だが、部隊はすぐに撤収していく。相手の実力に自分達が及ばないと見たらしい。
それをみてレクシスが真っ先に突撃。食い止めようとした槍持ちの歩兵を反撃の隙も無く間を通っただけで切り裂いて進んでいく。
「くっ、早い!」
「城攻めのあれを使え!奴らを食い止めるにはそれしかない!」
「・・・さすがは司令官だな。よし、動け!」
直轄部隊兵が何かの術を近くにある木箱にかけて、そのまま撤退していく・・・2人が何が出るかと身構えていると、いきなり木箱を突き破り土の塊が人の形を作っていく。
いや・・・人とは正確に呼べない。人方と呼べるが頭部は人の形ではなく腕は肘あたりから四角い形で向きも固定され、銃口のような穴が開いている。
マイナーな呼び方をすれば「武器腕」というのだろうか、脚部の間接も人と逆向きに折れ曲がっている。兵器として設計されたゴーレムらしい。無論娘のわけは無い。
「お、おい!何だこれ・・・!」
「シェングラスの新兵器だな。しかし何だこの形状・・・フロン○○○ションの○ストか・・・?」
レクシスが言いかけたとたん、腕についた銃口をゴーレムが向けていきなり強烈な炎属性の砲弾を打ち出す。
次々に爆風に吹き飛ばされ2人がたたきつけられる・・・シュナイダーはすぐに着地するがレクシスが火傷を負っている。防御術をかけるのが遅れたようだ。
「レミアス、後方に隊長を!」
「はっ!」
レミアスと呼ばれたケンタウロスがすぐにレクシスを運びに来る・・・その隙にシュナイダーは敵であるゴーレムの注意をそらすためにグレイヴを握り締め詠唱を始める。
「封鎖の氷「ロックドフロスト」!」
本来鍵や城門封鎖のために使う術をシュナイダーは敵のゴーレムの銃口へと放ち、銃口表面に分厚い氷の幕を張る。
攻撃されたと認識はしたがゴーレムは予想通り炎属性の砲弾を放とうとする・・・が、状況を理解しているとはいえない。
対になる属性は反響を起こし大爆発する。炎の対は氷・・・途端に銃口が大爆発し、ゴーレムの腕が吹っ飛んでいる。
「まだ来るか!?」
シュナイダーはグレイヴを構えなおし警戒するが、ゴーレムは武装が使えなくなったのを見て撤収する。
一息シュナイダーが付くと、レクシスの様子が気になり大声で叫ぶ。
「隊長は!?」
「いま、ちりょうちゅう・・・・」
シュナイダーの部下である水色のスライム、エスティが報告に来る。治療中ということは結構喰らったのだろう。
「了解、駐屯地はどうだ?」
「せいあつ、かんりょう。」
分かったとシュナイダーはうなずき、すぐに負傷者達を集めていた区画へと走り出す。重要な人物が捕らわれたまま作戦の中断は出来ない。
だが、事実上の指揮官であるレクシスが負傷し行軍は難しい・・・どうするのかとシュナイダーは思ってしまう。