「ラヴィーネ2番隊戦記」
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「・・・ミィル、大丈夫か?」

「お気遣い無く、ご主人様。」

シェングラス王都の城郭北棟屋根上・・・クラウスとミィルはどうやって上がったかも分からないがそこに座っている。

時刻はすでに夜明け、雨はいまだにやむ気配を見せず雷も混じっている。遠くで雷鳴が響くが、2人は屋根から動く気配を見せない。

「それより、風邪を引きませんか?ご主人様・・・」

「安心しろ。2日打たれ通しでもそれほど・・・」

そんなことを言いながらクラウスがくしゃみをすると、ミィルがそっとコートをクラウスへとかける。ミィルの持っている大容量のポーチから出したものだ。

中身はミミックだかつぼまじんを参考にしたため相当な容量があるという。いざとなれば人を収納してかくまうことも可能らしいが・・・そこから彼のコートを出したのだろう。

「分かった・・・悪いな、いつも。」

「役目ですから。あ・・・」

「どうした。」

「燃料90%減少です。」

冷や汗を流しながらクラウスはミィルを見る。最近3日くらいに1度は「燃料補給」を求めてくるミィルにあぁそうかとため息をつく。

実際の燃費をリムアーズに聞いたら1ヶ月くらいは持つらしいが「お前が好きらしいな」とにやついて答えてきた。クラウスにしては少々迷惑で場所をわきまえろと何度も言っているのだが。

「室内にしろ・・・ここだと本当に風邪を引く。」

「分かりました。では次の宿泊先で。」

「分かった。それと今度から燃料が減ったとかは正確に言え。実際にどれだけの残量があるか分かりにくい。」

しょんぼりとした顔でミィルが落ち込むが、クラウスが少々苛付いた表情を見せると、ミィルに背を向ける。

「・・・求めれば応じてやる。ただし室内でだ。こんな場所、依頼中に求められると危険が大きすぎる。」

「あ・・・はい、ご主人様!」

嬉しかったのかミィルが抱きつこうとするが、クラウスに肘うちを喰らい倒れてしまう。またかと思いクラウスはため息をつく。

どこぞの13階段を語った刺客ではないが、背後に走ってこられるとついつい反応してしまう。後ろからの行動に反射的にカウンターを返してしまう癖が付いている。

「何度も言うが俺の後ろに立つな。反射的に攻撃してしまう。」

「わかりました・・・」

 

「・・・分からないものだな、案外。」

シェングラス王都北区画・・・シュナイダーとリトはそこにたどり着いていた。魔物を嫌うシェングラスとは言え偽装していれば案外分からないものでもある。

よほどのことでなければシュナイダーも首は落ちないし、リトの偽装は完璧なものであり気配に敏感な軍人でもこの人ごみから見つけるのは難しいだろう。

「ですね・・・でも、貴方は旧ナーウィシア軍の人間ですか?」

「そうだが、何故?」

「鎧がそのデザインそっくりなので。でも複雑な術式はそれから後につけられた物で障壁効果倍増と氷属性術の支援効果、炎属性軽減など貴方のためのオーダーメイドですし・・・」

一目見た程度でそんなことまで分かるのかとシュナイダーがいぶかしげに見つめる。マーメイドはかなり知的だというが、彼女もその例に漏れないらしい。

ちなみにシュナイダーの保有する属性は氷。対の炎属性に対してはこちらも術でかなりの一撃を与えられるが相手の一撃も同等に強化されるためそれ相応のリスクがある。

「オーダーメイドか。あいつ、そこまで分かってたのか・・・?まぁ、俺はナーウィシア解放軍にいた。氷の奔流も知っている。」

「知ってるんですか!?」

「苛烈な戦い方をする、シェングラスにとっての畏怖の対象。強襲部隊の隊長だが行方不明、そんなところだ。」

相変わらずトーンの少し高い声に違和感を覚えながらシュナイダーが状況を説明すると、リトは落ち込んだ様子を見せる。

「そうですか・・・」

「何?」

「いえ、関係ない人を巻き込むわけにはいきません・・・これは彼個人への問題ですから。関係ない人を巻き込むなと。」

どうやら、正体を明かさない限り言うつもりは無いらしい。まぁだったらそのときまで待つかとシュナイダーは改めて感じる。

この依頼を最後にシュナイダーは完全に表舞台からすがたを消す。それも別に悪くは無い・・・今までの苛烈な戦いがたたった結果、素直に受け入れなければならない。

「・・・1つ聞くが、そのきっかけは2年前か?」

「ええ。何故?」

「その戦いに参加していた・・・リュート沖海戦。酷い真似をしたと思うな、俺も。」

2年前、ナーウィシア解放軍とシェングラス海軍が港を持つリュート領の制海権を握ろうと起こした海戦だが、シュナイダーはそのとき破天荒な作戦にでた。

海流を利用し、油を海に流し艦隊の駐留場所に引火させ炎上させたのだ・・・だが、その後での汚染問題やらなにやらでずいぶん責められた事がある。

おそらく人魚にも無数の犠牲が出たんだろうとシュナイダーは思っている。相当な量を流し炎上させたのだ、生態系にかなりのダメージを受けたはず。

「・・・あの海戦、相応の犠牲者が出ましたからね。」

「それだけか?お前達には・・・」

「いえ、気になさらずに。」

リトがシュナイダーの言葉をさえぎる。これから言うことを察したようだが、特に憎しみやそんなものを持っているようには見えない。

だが、まだ油断は出来ない・・・シュナイダーはとりあえず別行動をする場所まで一緒に行くと決めた。

 

 

「・・・潜入班は以上だな。」

メンバーをそろえてレクシスはシェングラス中央への国境ラインにたどり着く。10名程度でありそれぞれ顔を判別できないように布や民族衣装などで隠している。

魔物なども混ざっているが、それぞれ人間に偽装し全く判別できないようにしている・・・共通点は腕に白い布を巻いているくらいだ。

「はっ。」

「では進撃だ・・・ん?」

レクシスが真上を見て羽音に気づく・・・急降下して彼の目の前にリファが舞い降りてくる。息を切らせてここまで来たようだ。

「司令、私も行きます!」

「怪我は?」

「何とか・・・戦闘に支障ありません。多少痛みますが・・・」

自分も無理はしている身の上にシュナイダーの事もある・・・レクシスは止める気も無く、冷静に答える。

「無理はするな。それとシェングラスの人前では人間に偽装しろ。」

「あ、はい。」

リファが着地すると、そのまま術を仕掛けて変化させるが・・・薄い緑色の羽は背中につき、翼の民のような格好になっている。確かに腕や脚はわからないのだが。

「・・・目立つぞ、それは凄く・・・」

「だ、ダメですか?司令・・・」

「構わん、この際だ。人は多いほうがいい・・・いいな?」

レクシスが全員を見渡しても、特に依存は無いらしく決定だと言う。それを聞いてリファは嬉しそうに表情をほころばせる。

「じゃあ、がんばります!」

「全軍進撃だ・・・くれぐれも無用なトラブルは起こすなよ。」

元気よくリファが答えるのを聞いてからレクシスは指示を出す・・・シェングラス中央領は警戒もそれなりに厳しく、軍関係者の顔は判明してしまおう可能性も高い。

だが、すでにメンバーが移送され何に使うのかわからないが幽閉されているということは危険な事態には違いない。

 

「一体・・・何をするつもりなの。」

ナーウィシア中央城郭南棟・・・その一室でフェルアに呼び出されたリューンが彼女の真意を問いただそうとしている。

「まぁ、教えてもいいでしょう・・・近々ナーウィシア解放軍との大規模な戦闘に向けて貴方達の囲い込みをしようと思いましてね。人質にとれば下手に何も出来ないでしょうから。」

「傭兵の独立を奪うつもり!?」

「ええ。不確かな戦力があってはこちらの情報すら筒抜けになる恐れがありますから。明確にどちらかの勢力についてもらったほうがやりやすい。」

むっと来たリューンが机をたたいて怒鳴りつける・・・独立していてこその傭兵だ。そんな他人の意のままにされるのが一番嫌いではある・・・ことにルフトゲヴェーアは自由を謳い文句にする傭兵部隊だ。

「そんなことさせるわけには・・・絶対あんた達をぶっ潰す!」

「私たちは傭兵部隊を相手にして交渉やら予算を使う気は無いんですよ・・・それに聞いてましたか?私の目的は敵味方を明確にすること。成功してるんですよ、すでに。」

「え!?」

「貴方達は恨みのあまり解放軍に付こうとする。それが目的です・・・これを気に隠然たる勢力を築いている傭兵の組織を解体する。私たちの目的に邪魔をするのですからね・・・」

怪しげにフェルアが笑みを浮かべる・・・リューンは忌々しげに狂っていると吐き捨てるが、それしかいうことも無い。

「まぁいいじゃないですか・・・ここにいるのも利用価値はありますし、救出に来れば来るでまた面白いことになりますからね。救出に来れば、城郭の防御上の欠陥がわかりますし。」

「・・・フェルア、あんたは・・・」

「どう転んでも私の謀略の上を動いているだけでしかない。貴方達が独自に脱出してもいいですしね・・・まぁ、ここはソー○より脱出は難しいですが。」

「・・・」

リューンは一体何処のドラマだと思いながらも、このフェルアという人物は只者でもないことを改めて実感する。

どう転んでも自分の望む結果にするような謀略など考えたことも無い。このまま捕らえておけば傭兵部隊を手駒に出来るし、脱出したらしたでナーウィシア解放軍に寄り結果的に「不確定の戦力をなくす」という目的は達せられる。

シェングラスの将官は視野狭窄に陥っていると言うのが傭兵部隊の評判だが、彼女だけは違う・・・リューンははっきりと感じる。

「まぁ、あとは牢に戻ってください。」

「・・・」

どうあるべきか・・・リューンは考え直す。もういっそフェルアの思惑に沿わず傭兵部隊を今までどおり運営し、自衛戦力を強化するべきだろうかと。

自分達の存在がそれほどイヤになっているのだ、だったら嫌がらせを続けてさらに勢力を拡大してみようとも思ってしまう。

「・・・」

そっともらした微笑に、衛兵は一瞬だけ疑問符を浮かべるがリューンは構わずに衛兵を連れて牢まで戻っていく。

 

「・・・偽装なんて見破れるほどの人もいないですね。」

「当然だな。」

シェングラス領内の宿屋2階、6畳ほどの部屋にシージュとフィーナ、イーグレットの3人が滞在している。

フィーナとシージュは無論人に偽装した状態だが、それでも見破れる人はいないため難なく宿泊できた。

「普通から見てないと無理だろうな。魔物とか。自治領にいればある程度わかるんだろうけど。」

「・・・だろうな。まぁ、見たことも無い温室育ちの連中には外をうろついてるのしか知らないのだろう。」

フィーナが軽く言ってのけると、イーグレットがふと気になっていた疑問をシージュへとぶつける。

「そういえば、槍術なんてどこで覚えたんだ?」

「あ、槍ですか?」

「ま、構え方だけ見て何だけど基礎はしっかりと出来てた。俺とかフィーナとは違う、我流っぽいけど洗練されてるが・・・どこでだ?」

さすがにイーグレットやフィーナも長柄系列の武装を使うだけあって、よく見ている上に気になるのだろう。

少しシージュは思い返すと、あぁと1つの結論を出して答える。

「レクシスに教えてもらったです。」

「抜刀術の使い手が?まさか・・・」

「本当です!熟練した様子で教えてくれたです。」

改めてイーグレットはレクシスが凄いなとか思ってしまう。傭兵から解放軍司令官にまでのし上がっただけのことはある。

自治領周辺で依頼を受ける傭兵では相当な腕前であり、これまで何十人という有名な傭兵や正規軍の武将を討ち取ってきたという。

「ま、手が届きそうにも無いけどな、俺なんか。」

「イーグレットには難しいだろうな。だがいずれは手が届く。」

フィーナがそんなことをいい、イーグレットは出来るのかなと疑問符を浮かべている。

「やろうと思えば出来るです。解放軍は家柄とか問うことなく人を集めてるです・・・出世のつもりがあるならいいんじゃないですか?」

「いや、俺はなんというか・・・ま、シェングラスは気に入らないけど民間の依頼とかも受けてやりたいからな。傭兵にしか出来ないこともあるわけで。」

傭兵に舞い込んでくる依頼はずっと減ることは無い・・・それどころか最近の大規模な傭兵部隊の長が捕らえられたことによりたまっていく一方だ。

やはり傭兵は大事な存在ではある・・・正規軍に出来ないことを軽くやってのけるのだから。シージュは改めて実感する。

「ちょっと失礼ではないか?仮にも解放軍盟主の前だぞ?」

「お気遣い無く、フィーナさん。」

軽くシージュがなだめ、自分達に出来ることを改めて思いなおす。するとフィーナがイーグレットに訊ねる。

「そういえば、イーグレットはどうして傭兵を?2年前の反乱軍討伐で死んだとは言え、どうして?」

「・・・思った。シェングラスに対して反乱を起こす理由とか、いろいろと。そうしたら1つの結論に達した。反乱を起こす国家にも責任はあるって。」

何かを悟ったようにイーグレットが語り、シージュは少しうつむく・・・反乱軍と聞いて自分達じゃないかと思ったのだろう。

が、そうじゃないとイーグレットが否定する。ホークスと名乗るハーピーや人、ゴブリンなどで編成された強盗にも近い集団だった。

「あいつらの討伐依頼を受けて行って見たら、ホークス主力軍の大半は壊滅で残りは幼い人しか残ってなかった・・・けどシェングラス軍は誰彼構わず殺していった。それで報復の意識も薄れて、正規軍自体が嫌になった。」

「そう、でしたか。」

「でも槍を捨てたくなくて、生かせる場所はと思えば傭兵しかない。そう思って・・・ね。反乱軍、正規軍構わずああいう人達を守れるのは傭兵しか居ないと思った、それだけだ。」

軽く語るイーグレットに、空気が重くなったのを察したシージュが察したように立ち上がると、扉を開ける。

「どこに?」

「美味しいもの、探してくるです。シェングラスのスウィーツなんてなかなか食べられるものでもないです。貴方達もどうです?」

緊張感はまるで無いなとフィーナは突っ込みたくなったが、こういうときに自分の趣味を出せる人物は、ある意味大人物かもしれない。

自分のペースで動ける人はいざというときも落ち着いて対応できる。フィーナはうなずくと同行しようという。

シージュもうなずき、2人で外に出て行く・・・無粋だと思ったのか、イーグレットは1人で槍の穂先を磨き、これから起こるであろう戦いに身を引き締める。

 

 

「そろそろ夕方ですね。」

「・・・そうだな。」

シュナイダーは望遠鏡で外を覗いている。これから王宮に突入する・・・リトの話だと堀内部に水路があるという話だ。

一応氷属性術で固め、そこから進入できる・・・シュナイダーが綿密に計画を練っていると、双眼鏡にナーウィシア解放軍の一団が見える。

先頭に立つのはレクシス・・・ラヴィーネ部隊長であり自分の上官だ。シュナイダーは一安心するが、支援のためにやはり一緒に行く必要がある。

「・・・ん?」

誰かがこの空き家にまっすぐに走ってくる・・・とっさにシュナイダーが身を伏せようとすると目の前にリファが迫っていた。無論偽装した姿でありハーピーではなく背中に翼がある人・・・翼の民に近い姿をとっていたが、顔でわかったのだ。

「シュナイダー!!」

「ちょっ・・・!」

飛んできて真っ向からシュナイダーに抱きついたリファは押し倒すと、何度も羽で顔をたたきまくる。

「何で何も言わずにここに着てるんですか!せめて一言くらい連絡よこしてよ、もう・・・!」

「わ、解ったって、だから離れろ・・・」

「解ったから・・・シュナイダー・・・?」

今更のようにリファは彼の変化に気づく・・・が、シュナイダーはリトが見ている前でどうすることも出来ず仕方なく語りかける。

「・・・今の俺はシュネーとして通している。隊長に連絡するのは自由だがそこは考えておいて欲しい。」

「わかったよ・・・」

「あの、今シュナイダーって・・・」

リトが戸惑った様子で聞くと、シュナイダーは首を振ってリトにはっきりと答える。

「後で語る。今は・・・あの城郭に潜入してやらなくてはならないことがある。その時に氷の奔流のことも、すべて語る。」

「は、はい。」

自分に課せられた最後の任務だけは果たす。それだけ言ってシュナイダーがリファをつれて外に出るとレクシスらが待ち構えている。

少し路地裏へと入り、レクシスとリファが同伴でシュナイダーへと詰め寄る。

「何故そういう姿だ。髪が伸びて・・・声も顔も女性だ。」

「逆に何故解った?」

「どこかお前の面影がある上に口調が変わっていない、美人が台無しだ。」

「黙れ。美人というな。」

「もったいないぞ。」

「俺の嫁はリファだけだ。」

「ならば百合成立だな。」

「誰が百合だ!」

「否定するな。事実だ。」

シュナイダーがそうだったなとうつむく・・・そして危うく首を落としそうになるところを押さえ、何とか持ち直すとため息をつく。

「・・・好き好んでこうなったわけでもない、リファにレクシス・・・地下遺跡でフェルアの罠にかかって爆死したところをリシスと言う奴が助けて、こうするしかなかったと言っていたが。」

「・・・シェングラスのか。狂った奴だ・・・失った命を戻すだけでもどうかしている話というものを。」

レクシスが悪態をつくが。リファは素直に喜んでいるらしい。これから一番大変だというのは彼女だというのに。

彼女がシュナイダーの変化をどれだけ受け入れられるか。部下や友軍はどう思うか、レクシスは柄にも無いなと思いつつもそれらのことを不安に思っている。

「・・・シュナイダー。大丈夫なのか?」

「特に問題は無い・・・突入作戦はいつだ?」

「今夜決行、同時攻撃を仕掛ける。人質解放のために地下室を制圧し人質の武器を返してやれ。」

「はっ。」

姿かたちは変わったが、こうしてみると相変わらずかとシュナイダーは思ってしまう。なんら変わりはない・・・そっと路地の間から様子を見ている部下も受け入れてくれているようだ。

「俺はフェルアと一戦交えてくる。奴は戦わなければどうしようもない相手だろうからな。怪しくはあるが・・・何とかできない相手でもないだろう。」

「死ぬなよ。ナーウィシア解放軍の総司令が死なれたら・・・」

「お前が指揮を執れ、シュナイダー。苛烈な戦いで構わない、シェングラスにはそれくらいの痛手を負わせなければ交渉のテーブルに着くまい。」

言葉をさえぎってレクシスがシュナイダーの肩に手を置く。そこには姿が変わっていても意思だけは変わっていないシュナイダーが居ると信じていた。

「魔物とか人間とか異種族とか、どう変わろうと精神は変わらん・・・お前の相棒が一番わかっているだろうな。」

「何・・・?」

「そう何も捨てていくことは無い。切り捨てるのは敵だけでいいだろう、シュナイダー。終わったらリファのことを考えておけ。」

少し考え込むようにシュナイダーが座り続けると、レクシスはリファに目配せをしてから部隊に指示を出す。

残されたリファは、そっとシュナイダーへと語りかける・・・デュラハンと化した今の彼氏・・・もとい彼女を未だに好いていることは事実だ。

「リファ。俺を・・・どう思う?」

「どうって・・・」

「いや・・・」

「私、どういう姿でもシュナイダーを受け入れるよ?前より可愛くなってるから。」

今は軍人と部下としてではなく、思い人同士としてリファは話している・・・シュナイダーは目を伏せるが、リファは羽で首を掴み無理やり向けさせる。

「可愛いとか言うのダメ?」

「いや、そんなことは・・・だが、お前はそれでいいのか?娘とか一番・・・」

「いいのいいの!」

リファが全く気にしてないという・・・シュナイダーはいいのかと思ったが、リファは本当に大丈夫と強く念を押す。

「・・・まぁ、いいか。」

なんら変わりは無い、シュナイダーはそれだけ安心すると各部隊に指示を出すレクシスのところに行く。

自分は軍人、ならばいつもどおりやるだけでいい。それが苛烈といわれようと解放軍のためになるのだから。

 

「・・・案外解らんな。」

「だから言ったです。簡単でしょう?」

王城内部に入っていく馬車・・・そこに積み込まれた木箱の内部でイーグレットとシージュ、フィーナの3人が話している。

どうやら木箱をかぶって潜入しているようだ。中々解らないものであり積荷のチェックもほとんど素通り状態だった。

「でもこんな方法、よく思いついたね。」

「本来は「だんぼーる」と言うものを使うべきだと聞かされたです。レクシスから。」

「へー。」

でもそんな箱はウィングルアにあるわけが無い。とにかく潜入は成功したので安心して3人は到着を待つ。

到着したら真っ先に探し出してやろう・・・そう思いつつ。

 

続く

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