「ラヴィーネ2番隊戦記」
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「フェルア様、食事の用意が出来ました。」

侍従が夕食の時間になっても食堂に来ないのを見て、そっと扉を開けて食事を置いてゆこうとするが・・・その場で固まってしまう。

何度も自分の目をこすり、そしてはっきりと見て取るとおびえてしまう・・・するとフェルアもそれに気づいたのか、侍従を無理やり中に引き入れる。

「・・・見ましたね。この姿を・・・」

「何故シェングラスに魔物が!?そんな・・・!!」

「見たからには貴方も・・・私の眷属に加えなくてはいけません。あるいは死ぬか。」

侍従がその緑色の瞳を見開いたとき、フェルアは赤い刀身のレイピアを彼女の胸元に付きたて、詠唱を始める。

「っ・・・く・・あぁぁ!な・・・何故・・・!」

「シェングラスは邪魔なんですよ。私にとって・・・いえ、私たちにとって。だからこそ苦肉の策というわけです。」

「そ、そんな・・・っ!!」

詠唱を続けるフェルアの姿は人ではなく、ローブから羽と尾が映え、頭に角が生えた魔物・・・侍従はシェングラス随一の武将が魔物地右舷実を受け入れられず、目を見開いたままだ。

 

 

「さて・・・もう木箱もいいだろう。」

「そう、だな。」

シージュとフィーナ、イーグレットが王宮地下室を抜けてかぶっていた木箱を取り姿を現す。

「待たせたな!です!」

「・・・何故?」

イーグレットがシージュのセリフに疑問を抱くが「お約束です」と笑顔で答えるシージュに訳がわからないばかりか反論も出来ず、まぁいいかで済ませる。

問題はここからどうするか・・・だが、シージュが既にプランを立てているらしくそのまま南棟へと向かう・・・夜のために人は少ないようだ。

「人質をそのまま救出するつもりか?シージュ・・・南棟には牢獄があるが・・・」

「武器庫もあるです。だからまず武器庫に保管されてるであろう武器を取り戻してあげるです。」

何故?とフィーナが疑問符を浮かべたがシージュは何でわかんないんですかとでも言いたげに答える。

「だって、武器とかがあれば牢獄をぶちやぶれるじゃないですか。今回の人質は結構強い傭兵部隊の長なので多少無茶してもらうです。」

「で、その後はどうするんだ?開放して終わりか?」

「それもつまらないですし、レクシス達の支援もしたいです・・・っと。」

シージュが2階の曲がり角に来るといきなり蒼い光を放つ・・・すると、うっすらと蒼く壁越しや天井、床に人の影が映る。

この蒼い影が敵。だからこれを回避してゆけばいいわけだ。

「凄いな、シージュ・・・」

「ナーウィシアにあった術の書物にこういうものもあったので練習したんです。敵情偵察「エネミースキャン」、結構役立つです。」

シージュに導かれるように2人も後を追い、武器庫に入る・・・と言っても特殊な武器ばかりであり鎌やレイピア、それに土だけが入っているような箱もある。

「これが連中の武器か?」

フィーナが袋に入った槍や剣を見つけ、剣を抜いてみる・・・フィランギと呼ばれるルフトゲヴェーア製の強力な片手剣だ。

それをみてフィーナが見つけたぞとシージュに報告するが、シージュは土の入った箱を見て考え込んでいる。

「早く行かないとまずいぞ?敵に見つかったら・・・」

「・・・城内を混乱させてもいいですね。」

「何?」

そういうと、シージュは土の入った箱を窓から投げ捨てる・・・箱は頑丈で壊れることなく、中身もこぼさずに地面に落下する。

「城門付近で騒ぎが起きるからちょっと待つです。」

「何考えてる?敵地の真ん中で休憩は危ないぞ・・・?」

「いいんです。作戦です。隣の空き部屋に移るです。」

訳がわからない様子でフィーナはシージュについていき、イーグレットも随伴する・・・シージュは面白くなりそうなのか笑みを崩さない。

 

「・・・城門破壊後、火災を起こさせる。いいな?」

「はっ!」

レクシスは全員に指示を出し、シュナイダーは副官としてその指示にうなずくと小さい立方体の物体を城門に仕掛ける。

少し離れてからレクシスが術を詠唱し、闇属性を収束させると部隊のメンバーを見て言う。

「逃げるなら今のうちだ。怖気づいたなら去れ、臆病者はラヴィーネに必要ない。」

誰も退くものはいない・・・魔物達は偽装を解き、全員が武器を構え口々に歓声を上げる。

それでいいとレクシスもうなずくと、術を立方体に固めた爆薬に直撃させ爆発させる・・・爆風で門が壊れ、そのままレクシス達は城内に突撃する。

「な・・・何だ!?」

「敵襲・・・一体何処の軍勢だ!?それとも武装勢力か!?」

見張りが異変に気づくと、直ちにシェングラス軍が武装を整えて出てくる・・・常駐している守備部隊がすばやく戦力を整えてきたらしい。

さすがにシェングラスの精鋭部隊だとレクシスが感心するが、数は少ない・・・50名程度なら何の足しにもならない。

「進め!」

レクシスが先陣を切ってシェングラス兵を居合いで切り裂くと同時にラヴィーネ部隊が一斉に攻撃を開始する。

「時間をかけるな。部隊まとめてなぎ払え!」

「俺が出る・・・氷針「クリスタルダーツ」!」

シュナイダーがグレイヴを掲げると同時に無数の氷のツララが降り注ぎ、シェングラス守備隊を一気に貫いていく。

全軍がひるんだ隙を逃さずレクシスが中央突破を指示、ラヴィーネ部隊約30名は軽く守備隊を突破し城内への扉を破壊すると切り込む。

が・・・レクシスは何を思ったか単身で階段を上がろうとする。それをみてシュナイダーが引き止める。

「何をするつもりだ、レクシス!?」

「フェルアを倒してくる。全軍の指揮はお前に託す・・・奴に策謀を使わせる時間を与えないためには相応の実力者が戦わなくてはなるまい。」

「・・・ちっ、まぁいい!全軍突撃、城内の敵を混乱させ人質を救出する!南棟が牢獄だ、突撃しろ!」

シュナイダーがグレイヴを構え突撃すると、レクシスはうなずき階段を上がっていく・・・迷うことなく東棟最上階のフェルアの部屋だ。

シェングラス城郭は中央棟に国王の部屋と居住空間があり北棟は文官や貴族が。東西の棟に武官が常駐し南棟は倉庫と牢獄をかねているスペースだ。

突入したのは東棟。レクシスは道中の敵を意に介さず走り、切り裂きつつ進んでいく。

 

「突破しろ、この中央廊下の先が南棟だ!」

北棟と中央棟をまっすぐつなぎ、巨大な十字路を形成している中央廊下へとシュナイダー達の部隊が出るが南棟行き廊下に部隊が集結している。

「魔物どもの武装勢力か、それとも特殊部隊か?突破できると思うな!」

シェングラスの守備部隊・・・正面に白銀の鎧をまとった金髪の武将がいる。結構年配らしいがその表情は憎悪にゆがんでいる。

部隊長がハルベルトを構え、シュナイダーに向けると大声で怒鳴りつける。

「貴様らのような下劣な存在、我がシェングラスが討伐してくれる!フェルア様の命令によってな!」

「随分と手回しのいい司令官だな・・・が、貴様の腕が衰えていてはどうにもなるまい!」

シュナイダーもグレイヴを構える・・・部隊長は部下が構えるパイクの槍衾の後ろに控えて自信満々のようだ。

「まぁ、魔物風情と手を組む連中では勝てまい。ナーウィシアのメス犬が!ラヴィーネだか何だかわからんが、俺達を突破できるのか!?」

「城内が貴様の墓場だ・・・本望だろう?喰らえ!」

シュナイダーがグレイヴを振り回し、床に突きつけると水色の凍てつく衝撃波が敵部隊に向かっていく。

が・・・敵のパイクに触れた瞬間一瞬で防壁に阻まれてしまう。防御部隊だけあってさすがに簡単に通してくれないらしい。

「無駄だ!ナーウィシア戦争のとき俺たちの部隊は無数の騎馬部隊やケンタウロスども葬ってきたのだ、貴様のような術では突破も出来ん!」

「迂回路を取ろうよ、シュナイダー!こんな連中、相手にしても無駄!」

リファが進言するが、部隊長はリファを嘲笑するかのように答える。

「このルートしか南棟に行けないのだぞ?壁をぶち破ることも難しい・・・まぁ上の階には守備部隊も常駐している。低脳のハーピーらしい意見ではないか・・・!」

「何だって!もーあったまきたんだから!そこからうご・・・」

リファが突撃しようとするがシュナイダーは何とかそれを止める。下手に突撃すれば防壁に直撃しぶっ飛ばされるのは目に見えている。

「離してよ!あいつらぶっ飛ばさないと気がすまない!」

「リファ、落ち着け!連中に突撃しても深い手傷を負うだけだ!」

「でも、あいつらを・・・!!」

リファを推しとどめるのに必死になっていると、隊員の1人が後ろから来るゴーレムを見て慌てて報告する。あの時シュナイダーやレクシスと交戦したのと同系列のものだ。

「隊長、後ろから敵です!伏せてください!」

「こんなときに背後からだと!?く・・・!!」

防御術である障壁を張って全員が伏せる・・・そのゴーレムはやはり火力任せに連射してくるが、その目標は防衛部隊だ。

「な、何を狂ったか!?ふざけるな!敵はラヴィーネだぞ!?」

「無理ですよ。だってそれは私の命令で動いてるんです。他2体はシェングラス兵目標に暴れてもらってるです。」

砲撃型ゴーレムの上に載っているのは緑のローブに槍を構えた17歳くらいの女性・・・シージュに違いなかった。

いきなりの主君の登場にシュナイダー達は驚いてしまうが、防壁が弱っているのを見て部隊に命令を出す。

「全力で防壁を破壊しろ!術をぶつけて支援だ!」

炎や氷、闇、雷・・・・様々な属性の、様々な形の遠距離用攻撃唱術が放たれ防壁にぶつかっていく。

さすがに部隊長も怖くなってきたらしく、南棟の扉を開けて逃げ出してしまう・・・それと同時に防壁が崩れ去る。

「ラヴィーネ、突撃です!」

「シージュ様・・・了解!」

一応国王でもある彼女に様付けで答え、そのままシュナイダー達はパイクを構える守備部隊に突撃する。

守備部隊はパイクで防御できないと悟るとすぐに投げ捨てて剣を引き抜き応戦しようとするが、先の部隊長を八つ裂きにしてくれると激怒したシュナイダーとリファを先頭にあっけなく突破されてしまう。

「部隊長、シージュ様が・・・いつの間にかまた!」

「・・・!?」

いつの間にかシージュがまた消えていた・・・この城内で捕まることはなさそうだが、手間のかかる主君だと思ってしまう。

だが、あの部隊長が先だ。シュナイダーは念のため部下に指示を出しておく。

「シージュを一応探せ!俺たちは先に行く!」

「了解!」

リファとシュナイダーだけで南棟へと向かい、2人は地下牢を目指しなれない城内を捜索し始める。

 

「・・・シェングラス軍第1軍司令官、フェルアだな。」

扉を開き、シュナイダーが剣の柄に手をかけて構えなおす・・・が、ベッドに座っているその姿を見て少し驚きもしていた。

まさかシェングラス内部にサキュバスが紛れ込み、内部から操ろうとしているとは思っても見なかった・・・水色の美しいロングヘアーと赤い瞳はフェルアそのものだが。

「だとしたらどうします。」

「お前を倒す。倒さずとも、時間稼ぎにはなる。」

「さすがは傭兵上がりの司令官・・・少々無謀な真似もしてきます。だが、それでこそ面白いではありませんか。」

フェルアはベッドから立ち上がり、赤い刀身のレイピアを引き抜くと真正面に突き出す。

「魅了は無しです・・・貴方には聞かないでしょうし、実力でねじ伏せた方が後のためでしょうから。計画の障害となりえる貴方には消えてもらいます。」

「その細腕でねじ伏せられるか?フェルア・・・!」

レクシスが歩いていくと抜刀術で一気に切りかかるがフェルアはレイピアで受け止めきる・・・完璧に物理法則を無視した強靭さを持っているようだ。

すぐにフェルアが受け流すと光を収束させて側面からレクシスへと叩き込むがレクシスは寸前で闇属性を張る。

属性が反響しフェルアは窓を突き破るも、何とか這い上がってくる・・・逆にレクシスは壁にたたきつけられ、隣の東棟吹き抜けホールへと飛ばされてすりに強く体を打ち付ける。

「・・・ちっ!」

フェルアがレイピアを突き出してくるがレクシスは横に交わすとフェルアの突き出した右腕を蹴飛ばしその隙に立ち上がる。

逆に剣をなぎ払うがフェルアはすばやくレイピアを引き戻し、ホールの下階連絡通路へと飛び降りる。

「私を倒すのでしょう?追いかけてはどうです?」

「やってくれる!」

レクシスも飛び降りるとそのまま剣を振りかざすがフェルアもレイピアで受け止める・・・鍔迫り合いに入ったようだ。

「・・・1つ言ってあげましょう。いずれシェングラスは私が崩壊させて私達の国にしますよ。解放軍はそれまで待ってはどうです?」

「お前のいう世界に、人との共存があるならな・・・お前が望むのはこの世界全ての制圧、魔物のみの・・・それも足がかりがほしいのだろう?」

「何故?」

「剣を交えればある程度わかる。野望と絶対的な意志、そういうのが見え隠れしている・・・」

そっとフェルアは微笑すると、互いにはじき返し距離を置く。

「違いますね・・・私の望む世界は理想郷。魔物だけではこの世界は成り立たない、人も同じですよ・・・だからこそ制圧が必要です。排他的な考えを強制的にでも捨てさせなければ。いずれ隣国への侵攻軍も整えますよ。」

「・・・お前の考えは他者の意見を認めない排他的なものだ。許すわけには行かないな・・・どれだけの悲劇を生むと思っている!?」

「世界は悲劇の積み重ね、戦争は意志を通すための手段・・・私は生温い現状維持が大嫌いなんですよ。悲劇を見過ごすような・・・貴方も、この国も!」

フェルアが一気に切りかかるが、レクシスも剣で受け止めて何とか耐え切る・・・細腕だが力は一流の剣客に引けを取っていない。

シェングラスでも第1軍といえば精鋭中の精鋭。それを束ねるだけあってやはり武勇は相当なもの・・・だが、レクシスも負ける気は殆ど無かった。

 

「・・・追い詰めたぞ?」

「ここまでよ、さっきの言葉・・・後悔させて上げる。」

南棟貴重品保管室。部隊長はそこまで来るとふっと微笑しガラスケースを壊すと、その剣を取り出す封印呪術の解除を始める。

もう半分やけを起こしていたらしい・・・高らかに笑うと、剣を構えなおす。

「この剣をタダの剣だと思うなよ!?かつて古の名匠が打ち出した至高の剣、ここに飾っていたのを思い出したのだからな!」

「剣程度で戦局を変える時代は終わったのだがな・・・解らないのか?リファ、下がっていろ・・・俺だけで片付ける。」

「何を!覚悟しな!」

部隊長が剣を振りかざすがシュナイダーはグレイヴで受け止め、すばやくはじき返してしまう。

腕前はなっていない。剣頼みということか・・・ふっと微笑すると勢いを付けてグレイヴを振り下ろす・・・部隊長の持っていた剣は真っ二つに切り裂かれ、彼自身も致命傷を負っている。

「・・・な、何故だ・・・?」

「まがい物の剣で勝てると思ったか?こっちはクロム・ヴェインの剣・・・レプリカには負けないがな。」

一目見てシュナイダーはレプリカとはっきり解ってしまった・・・装飾などが派手すぎて実戦で使えるようなものではない。

「・・・く・・・!」

「お前はここで終わりだ・・・運がよければ科学者とやらに助けられるかもな。」

部隊長が倒れこんだのを確認してシュナイダーが部屋から出ると、地下室行きの階段がある。

うなずくと、2人揃って地下へと突入するが、地下室は既に死屍累々であり他の人物が襲撃し脱出していたようだ・・・シュナイダーは周囲を見渡すと、銃を構えた刺客がいる。

「人質は解放し終えた・・・ぞ。」

「お前は・・・」

あの襲撃で行方不明になっていたはずのクラウス・・・彼がミィルを連れて別の出口に通じる出口に立っている。

「・・・言っておくが、俺はシェングラスの連中に恨みを晴らしただけだ。ミィル、行くぞ。」

「はっ。」

まったくと思いクラウスが手招きすると、あの時捕まったメンバーが武器を持って出て行く・・・その中にフィーナとイーグレットも混ざっていた。

「解放軍の人?シージュ、何処に行ったか知らない?」

「いや・・・」

シュナイダーも何処へ行ったか皆目見当も付かない。イーグレットは困った様子で周囲を見渡しているとリファが訊ねる。

「貴方達は?」

「シージュの護衛として雇われたけど「彼らに武器を渡してください。私は陽動するです。」と言ってはぐれて・・・」

そういう主君だとシュナイダーはため息をつく。シージュに限って大人しくしているような真似は一切無い。自分で強襲部隊に紛れ込んで突撃するなど日常茶飯事だ。

「解った、とりあえず探してくる。リファ、それと護衛・・・行くぞ。」

「護衛と呼ぶな、俺はイーグレット。よろしくな?」

「解った。」

シュナイダーはリファとイーグレット、フィーナを引きつれ上の階へと向かう。レクシスやシージュをそろそろ迎えに行かなくては行かないだろうから。

 

 

「さて・・・」

突き出されたレイピアをすぐにはじき返すとレクシスは足元の通路を一気に切り裂く・・・すると、通路が傾きだす。

「なるほど、なかなか貴方もやりますね・・・!」

一瞬だけフェルアがバランスを崩した隙を逃さずレクシスが剣を振り下ろすが、フェルアはすぐに自らに光をまとわせると爆発させる。

吹き飛ばされたレクシスは吹き抜けをそのまま落ちていくが・・・いきなり触手に巻きつかれ、そのまま救助される。

「シージュ!?何故ここに・・・!」

「結局、レクシスは私がいないとダメな人みたいですので。」

「言ってくれる・・・」

やれやれとレクシスがため息をつくと、真上からフェルアが切りかかってくる・・・すぐにシージュは手すりの内側にレクシスを引きずり込むと、他の触手で槍を握りレイピアを受け止める。

「っ・・・ローパーですか。解放軍盟主が・・・」

「いいじゃないですか。さて、戦うならぶっ潰すです。そろそろラヴィーネが作戦行動を終えてるです。」

「ではせめて、貴方達を道連れにして・・・っ!?」

フェルアが翼で浮き、レイピアを振るおうとするがいきなり右腕を切り裂かれそのまま落下していく・・・レクシスが剣を抜き放ち、黒い闇をまとわせている。

一瞬で斬撃を食らわせたためシージュに集中していたフェルアも反応できなかったらしい・・・ふぅとレクシスが座り込むとシージュが触手を巻きつかせる。

「お、おい・・・!」

「さ、休んでる暇があるなら撤退です。強襲部隊ラヴィーネ、作戦完了です!」

「もう好きにしろ・・・」

無理やり触手に縛られてレクシスがつれられていく。解放軍にとってはいつものことであり、レクシスも恥ずかしくはあるが慣れた物だ。

全くそんな感情を意に介さず、シージュは吹き抜けのホールを触手をロープ代わりにして降りて、フェルアのことなど忘れたように脱出していく。

 

「・・・解放軍総司令と、盟主・・・」

フェルアは立ち上がる気力こそ無かったが、首を彼らのほうに向けて微笑する。久しぶりに面白い相手が見つかったようだ。

人と、人から変わった魔物。それが何処まで出来るか見せてみてもいい。自分を打ち負かせるなら隣国に計画の場所を移せばいい、幸いにも寿命は長いのだから。

「さて、頑張ってみてください。せいぜいね・・・」

 

続く

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