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【魔界広報官キャスク】
魔王の娘デルエラに仕えるラタトスクの広報官
自身が人間から魔物に生まれ変わり伴侶と爛れた生活を送る様になった経験から
「魔物になって彼と爛れた生活を送る空想が頭の中から消えない」
彼女からインタビューを受けた女性がそう答える程に人間を堕落に導く事に長けています

彼女はレスカティエ陥落の際にレスカティエ国内の情報操作、およびデルエラ率いる侵攻軍の魔物たちの士気を高める役割を担った功労者の一人
今回は彼女が侵攻の前に魔物達の士気をあげるために書いた記事、つまり魔界の新聞社は気まぐれで自由な魔物達をどの様に煽動したかをご紹介します

レスカティエ陥落前、当時の新聞ではレスカティエ国内を紹介する特集記事が度々組まれました
教えに従い清く正しく生きようとする民、日々鍛錬を欠かさない逞しい兵士や騎士、そして人々を想い戦う勇者
レスカティエはそんな素晴らしい人々がいる国であると紹介され、多くの魔物達が胸を躍らせました

【現地で手に入れた旦那様とレスカティエの誇る荘厳かつ美しい主神教会でのウエディング】
【月夜に特に美しいレスカティエ自然公園、赤い月もどれだけ生えるだろうか?
美しい庭園を造った庭師(60)は未だ未婚であり……】

日夜、新聞を飾るこの様な特集に、現在レスカティエで旦那様と過ごしている魔物の中には
主神教式の結婚式の様式を調べたり、レスカティエの郷土料理の勉強を始めた方々も多くおられる事でしょう

この時期には主神教団の関連書籍や、
同出版社から発売された【勇者たちの故郷飯 ~レスカティエ料理全集~】が売れに売れたものです

魔物達の間で、この時はまだ「いつか行ってみたいなレスカティエ(婿探し」といった認識だったのですが
【レスカティエの悲劇の王・カストール】という記事がレスカティエを悲劇的で、魔物にとってセンセーショナルな国家に変えました

この記事は理想と人格を併せ持ちながらも力足らず心を擦り減らしていった当時のレスカティエ王の半生を紹介したものであり
レスカティエの煌びやかさと豊かさの裏には、この様な多くの悲劇があると魔物達に伝えました

この記事により魔界では、多くのデーモンやデビルが怒りに震え
多くのキキーモラが奉仕欲を募らせ
多くのブギーが母性を沸き立たせたといいます

「いつか行ってみたいレスカティエ」は「必ず行こうレスカティエ」になったわけですね
更には、この頃からどこからともなく【レスカティエ勇者目録】や【レスカティエ未婚男性リスト】が市井の間で出回り始めました

こういった事もあり、後に侵攻に参加する事となる多くの魔物達が「恋心」「真心」「下心」を3点セットで募らせていったわけですね
信仰前夜は瞳を赤く爛々と輝かせていた娘が多かった様に思います

もちろん彼女達は、その後行われた志願兵募集に我先にと参加したわけで
レスカティエ侵攻では、大規模侵攻をするからと前情報無しに参加して現地で気に入った男性を襲ったという魔物だけではなく
最初からこの人と決めていて、一直線に彼の元へと向かったという魔物も少なくはなかった事でしょうね

この様に、気まぐれな魔物達の士気を高めるにはやはり、
侵攻先の情報……どの様なお婿さんが待っているのか?
現地で手に入れたお婿さんとどんな素敵な生活ができるのか?
お婿さんとどんな場所でどんな気持ち良いえっちができるのか?
という情報を広めるのが最も有効な手段となります

またそれに加えて、【レスカティエの悲劇の王】の様に彼女達の愛欲や獣欲、保護欲、所有欲、奉仕欲などなど……
魔物達の行動を決める最も強い指針となる彼女達の欲望を刺激する情報を添える事が非常に効果的であるとされています

逆に「レスカティエはこんなに酷い国だ!」と書き立てるのは逆効果であるとされています
過激派に属する魔物には強い効果がありますが、属さない魔物は基本的に「侵略して国家を自分たちのものにする」ではなく
「その国家に移住して一緒に暮らす♥」という感覚で侵攻軍に参加しています

酷い国だという情報が先行すると「そんなひどい国に旦那様をおいておけるか!」となり、
魔物達は国を堕とす事ではなく、目当ての男性を魔界に連れ帰る事を優先しがちになってしまうわけです

なお余談ですが
侵攻が完了し魔界となった後は、その国家において結ばれた夫婦の実体験の記録も移住者の募集に有効です

例えば、魔物達に人気があったのは【フランシア・レイネル・レスカティエ前王妃の手記】
人間であった頃、夫のカストールを支えきれなかった事を悔いた彼女は
レスカティエ侵攻に際し、傾国の美貌を持つ「妖狐」に生まれ変わりました

その愛の深さ故に、彼女は自分という存在は、夫がただ肉欲に溺れ身体と心を休めるための「閨」であるとして、
「閨狐フランシア」を名乗り、王を辞し、愛する祖国の外交官として精力的に働く夫に度々爛れた休息と快楽をもたらし支え、堕とし続けているのだといいます

彼女の人間であった頃の愛の深さ、魔物となって開花した「愛欲」の物語は、ロマンティックな話だと評判を呼び
夫の身心の疲れを全て一身に受けるという点が管理主義のデーモンやアヌビスに感銘を与えたのみならず
キキーモラの奉仕欲を刺激し、遠い外国の稲荷といった魔物の憧れも集めたのだといいます

というわけで、長々とお読みいただきありがとうございました!
キャスク広報官の肖像は、文章だけだと話の始まりがどこなのかわかりづらいと思ったため
急遽用意させて頂きました

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