ペイルライダー ・病魔属 ・エレメント型
○生息地…不明
○気性……狂暴、陰気
○食糧……人間の男性の精
○終焉を知らせるラッパの音色と共に現れるという不気味な騎士たち。
病的な肌の色に禍々しい鎧や馬、爛々と暗く輝き獲物を見つめる瞳。不和や不穏をその身で体現するかの様な姿は、対峙した者に根源的な恐怖をもたらす。
その正体は、災厄として人類にもたらされるはずだった「病魔」が魔力と結びつき、魔物となったもの。
彼女達には常に付き従う様に瘴気が付いて回り、この瘴気は晒された者の身を病魔で蝕むという恐るべきものである。
騎士たちはそれぞれが自身そのものである一つの病魔を宿しており、人々にもたらす。その中でもよく知られている病を紹介する。
「飢餓の病」は伴侶との触れ合いや交わりにより覚える多幸感。その上限を留める枷の様なものが失われる病である。
際限ない多幸感は、逆に伴侶と触れ合わない時間を飢餓のことく耐えがたいものへと変え、重篤化した女性の場合は伴侶の男性器が常に体内に存在することや、子宮内を常に出されたばかりの精液で満たす事まで求めてしまうという。
「狂戦士の病」は伴侶の存在が、自らをひどくムラムラさせるものとして感じられる様になり、重篤化すれば伴侶の何気ない一挙一動の全てが劣情を煽る。
共に罹患した夫婦はやがて、日常的に互いの隙を伺い、犯し合い蹂躙しあう生活を送る事となる。
「暴食の病」は全身のあらゆる器官が少しずつ吸精器官へと変わっていく。女性であれば、自らのあらゆる部位で夫の男性器を責め立て、全身に精を浴びることに恍惚を覚える様になり、
一方の夫は、全身が伴侶の魔力を無抵抗に吸収する器官となったが故に、容易く精を吐き出し伴侶の暴食を満たす餌となってしまう。
彼女達は自身の病魔により狂気に蝕まれており、気に入った男性を獲物として執着し、粘着質で病的なまでの愛欲を向け続ける。
加えて、罹患者に発生する症状と同様の性質や特性を持ち、それにより発作的に男性を襲う事も多い。
多くの場合、獲物を定めたペイルライダーは恐れ慄く獲物の唇を突然奪い、舌を絡めて唾液を交換する濃密な接吻を行う。
その口からこぼれる吐息もまた、濃縮された病魔を含む高濃度の瘴気であり、濃密かつ執拗な誓いの接吻により身体の内側を瘴気で満たされた者は、たちまちのうちに全身を病に侵される事となる。
元が病魔であるが故に、彼女達は愛する男性の身体を自らそのものである病魔で蝕み、全身に行き渡らせる事に狂気的なまでの悦びと恍惚を覚えるのだという。
そして濃密な粘膜同士の接触、即ち性交は著しく症状を進める行為となる。彼女達は高頻度かつ長時間の交わりを日常的に繰り返し、夫の身体を蝕む病魔を進行させようとする事だろう。
また、彼女達はこと自らの夫が、自身の病魔とは別の病に罹る事をひどく嫌うという独特の精神性を持つ。
その精神性を体現するかの様に、彼女達の病魔は獲物を侵す際に、別の病を全て取り込んでしまうという性質を持つ。
その場合、元々罹っていた病は完全に快癒する一方で、彼女達のもたらす病はより重篤化する傾向があるという。
なお前述した通り、ペイルライダーは病魔そのものであるが故に、もたらす病は全て個体ごとに異なる固有のもので、全く同じ病魔はこの世に一つとして存在しない。
それは同じ病魔を宿す個体が二人として存在しない事だけではなく、世界において同じ病魔はその個体を除いて存在しないということである。
症状の悪化と共に身体が黒ずんでいき激痛の中で死に至るという、かつて存在したある病は、あるペイルライダー一個体の出現と共に世界から消え去る事となった。
即ち魔物へと変わったが故に、必然的に元となった病魔は世界から存在しなくなるという事であり、新たなペイルライダーの誕生は、世界から一つの病が消えるという事を意味するのだ。
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