ストレンジさんから戴きました!
ありがとうございます!

〜〜If……another future〜〜

 太陽が少しずつ傾き始めた午後の住宅街。白線とブロックで区切られた歩道を、男女それ
ぞれ2人ずつの少年少女が歩く。彼らが着ているのは近くにある西純高校の制服。時折通り
過ぎる車の起こす風が、深い緑色をした女生徒のスカートを翻らせた。
 彼らは皆手に鞄を持ち、とりとめない雑談をしながら足を進める。多くの人々にとっては
まだ帰宅時間には早いらしく、道には彼ら以外の人の姿はなかった。
「あー、やっとテスト週間も終わったな。ほんと今週は地獄だったぜ。テストなんか、いや、
もう学校なんてなければいいのにな」
 男子学生の一人が、大きく息をつく。それにもう一人の男子学生が、呆れたような声を出
した。
「やれやれ、何言ってんだよ蓮司。大体お前は授業中いつも寝てるからいざという時そうな
んだよ。な、明日奈」
「あ、あはは……私も時々眠くなっちゃうから、あんまり人のことは言えないけどね」
 少年から話を振られ、明日奈と呼ばれた少女は優しげな顔に苦笑を浮かべる。
「でも明日奈お姉ちゃんは最初から最後まで寝てたりはしないでしょ? 十分真面目だよ」
 男子学生の一人と手を繋いでいる少女が、明日奈にフォローを入れる。彼女は他の3人に
比べて幼いといえるほどの背格好であったが、纏うブレザーから彼らと同じ高校生だとわか
った。
「ありがと、理梨ちゃん。でも理梨ちゃんはこんな悩みとは無縁かな?」
「ううん、そんなことないよ。わたしだって眠くてあくびしそうになっちゃうことあるもの」
「ふふ、理梨ちゃんでもそうなっちゃうか」
 理梨と呼ばれた女の子の言葉に、明日奈は微笑を浮かべる。その会話に、理梨と手を繋い
だ方の男子学生が少女をたしなめるような声を出した。
「おいおい、いくら眠くてもしゃきっとしないとダメだぞ理梨」
「わかってるよ、おにいちゃん。ちゃんと我慢して起きてるってば。それよりも、おにいち
ゃんこそ今回のテスト大丈夫なの? 授業は聞いてるだけじゃなくて、ちゃんと理解しない
と寝てたも同然だよ?」
「うっ……」
 妹の手厳しいコメントに、彼は声を詰まらせる。その様子を面白がった蓮司がからかうよ
うな調子で続けた。
「まーなぁ、静流は基本真面目なんだけど、理梨ちゃんと比べっと流石に成績見劣りするも
んな。西高の歴史の中でも一二を争う天才少女が妹だと、兄としては威厳を保つのも大変だ
ねえ」
「うっせー、ほっとけ」
 痛いところを突かれた静流はむすっとした顔で吐き捨て、悪い悪いといいながら彼の肩を
叩く蓮司を軽く睨んだ。
 そんな兄をフォローしようと、理梨は慌てて口を開く。
「そ、そんなこと無いよ! わたしおにいちゃんのこと尊敬してるもん! あ、ほらお料理
とか! いつも美味しくて、わたし大好きだから。わたしの周りの女の子でもなかなかあそ
こまでの腕を持った子、いないもん」
「ありがとな。まあ、なんだか男としてはその評価は微妙な気もするが……」
 とほほと力ない笑みを浮かべた静流と、わたわたする理梨。
「本当、あの二人って仲いいよね。同性同士だってあそこまで仲いいの珍しいのに、お兄さ
んと妹でああだものね」
「だな。時々、兄妹よりはなんかカップルみたいに見えるっつうか。ま、仮にそうだとして
も理梨ちゃんの方が優秀だから、静流は苦労するだろうけどな」
 夫婦漫才のようなやり取りを続ける二人の姿を見、蓮司と明日奈はくすくすと笑いを漏ら
すのだった。

―――――――――――――

「じゃ、俺たちはここで。また来週な」
「おう、じゃーな」
「またね、須藤くん」
 一行は十字路に差し掛かると、家の方向が異なる蓮司と別れた。自宅の方向へと折れ、横
断歩道を渡った静流と理梨、明日奈はしばし会話を続けながら静かな住宅街を歩く。
 ほどなくして、彼らの視界に住み慣れた自分達の家が姿を現した。静流と理梨は自宅であ
る瀬良家の鉄柵を押し開け庭に足を踏み入れると、明日奈に振り返り声をかける。
「じゃ、明日奈。俺たちはここで」
「ばいばい、明日奈お姉ちゃん」
「うん、ばいばい。二人ともまたね」
 彼らの声に顔を向け、手を振り返した明日奈も自分の家へと向かう。彼女がドアを開け、
ただいまと言いながらその姿が玄関へ消えていくのを見送った兄妹もまた、家の中に入って
いった。
「ただいま」
「……」
 ドアを後ろ手に閉めた静流に、彼より先に家に入っていた理梨が無言のまま振り返る。そ
の表情は一見、下校途中に見せていた兄を慕うものと変わらないように見えたが……どこか、
普段にはない、熱っぽい色が滲んでいた。
 微かに荒くなりだした呼吸が、静かな室内の空気を乱す。何かを堪えきれないのか、理梨
がもじもじと腿を擦り合わせると、スカートの裾から滑らかで細く、先端がハート型をした
尻尾が飛び出した。
「お……おにい、ちゃん……」
 潤んだ瞳が上目遣いに静流を見つめる。頬は既に朱に染まり、切なげな吐息が小さな唇か
ら漏れ続けている。背後の尻尾もどこか妖しさを感じさせる動きで、ゆっくりと揺れた。
「……分かってる」
 静流はそういうと、最早泣き出しそうな表情になっていた理梨の頭に優しく手を置く。彼
女の髪を軽く指に絡め、頭をなでてやるだけで、少女の身体は震え、口から小さな嬌声が漏
れた。
「……あ、ふっ……」
「部屋で待ってるから。とりあえず荷物置いて着替えて来い」
 理梨が赤い顔でこくりと頷くのを見、いまだ階下に留まる妹の気配を背後に感じつつ、静
流は階段を上がる。自室のドアを開けると見慣れた光景が目に映った。窓から見える太陽は
既に夕日となり、部屋を赤く染めている。
 彼は漫画の詰まった本棚や、朝にたたんだ掛け布団が上に置かれたベッドに目もくれず、
電気もつけずにそのまま室内に足を進めると、綺麗に片付けられた勉強机の上に鞄を放った。
「さて、俺も着替えるか」
 一人呟くと、静流は勉強机と反対側のクローゼットに向かう。ブレザーを脱いで取り出し
たハンガーにかけ、そのまま中にしまいこむ。
 シャツ、ズボンも脱いでラフな部屋着に着替えていると、廊下を妹が歩くぱたぱたという
音が聞こえてきた。直後に、隣室のドアが開けられ、ごそごそという音が彼の部屋まで響く。
 壁越しにも、妹のやたら慌てた様子が伝わり、彼は苦笑を浮かべて呟いた。
「やれやれ、俺は逃げたりしないっつうの」
 着替え終わった静流は、脱いだシャツを椅子にかける。そうこうしているうちに隣の理梨
の部屋は静かになっていた。どうやら、もうすぐ彼女の準備も終わるらしい。
「さて、楽しませてもらおうかな」
 小さく息を吐いてベッドに腰掛けた彼の瞳は、闇が深まりだした部屋の中で一瞬だけ、魔
性の色に煌いた。

―――――――――――――

 カーテンが閉めきられた、薄暗い室内。部屋の間取りも置かれた家具も、そこに特に異な
ものは無い。一見したところどこの家にもあるような、ごく普通の一室である。教科書が詰
められたままの鞄が載った机や、漫画本が並べられた本棚、黒く画面を沈黙させるテレビな
どが暗闇が深くなり始めた黄昏時の部屋の中、ぼんやりとそのシルエットを浮かび上がらせ
ている。
 ありふれた光景のはずなのに、それはどこか現実感の失われた印象をもっていた。
 その薄闇の中、一人の少年がベッドに腰掛けていた。彼は目を閉じ、手を組んだままでじ
っと何かを待っている。口からは一言も言葉を発さず、身じろぎ一つせずに座り続ける彼は
まるで眠っているかのようにも、よく出来た彫像のようにも見えた。
「……来たか」
 不意に彼は片目を開け、短く呟く。それとほぼ同時、部屋のドアが静かに開き、一人の少
女が音も無く室内に足を踏み入れた。少年よりもずっと年下に見える外見でありながら、極
薄のキャミソールのみを身に纏った少女からは、その幼い外見とは不釣合いなほどの扇情的
な雰囲気を漂っている。
 それは、この家で少年、静流と共に暮らす彼の妹、理梨であった。
「おまたせ」
 少女は彼の前まで歩み寄ると、淫らな色を湛えた瞳で微笑む。それが引き金であったかの
ように、少女の姿が変わり始めた。
 ツインテールの髪は輝きを増し、黄金色に。同時に側頭部のやや上側辺りに、深い紫色の
角が生える。隠れていた耳はいつの間にかぴんと尖り、髪の毛をかき分けるようにして姿を
現していた。
「んっ……」
 理梨が小さく声を発すると同時に、背中、腰のやや上からはこうもりのそれを連想させる
薄い皮膜の羽が伸びだす。あっというまに大きく広がった羽を、彼女は感触を確かめるかの
ように動かした。空気がそよぎ、静流の前髪をかすかに揺らす。
「…………」
 妹の体が人ではありえないものに変わっていく光景にも慌てた様子は見せず、静流はただ
黙って座り続ける。いや、彼の目にはまるで何度も眺めたお気に入りの絵を鑑賞するような
……満足げな色がはっきりと現れていた。
 その間に理梨の腰からは先ほども姿を見せていた細い尻尾が現れ、くねくねとどこか扇情
的に揺れる。期待と興奮に染まる肌の上には、不可思議な紋様が浮かび上がっていた。
「……どう、かな?」
 完全に変身が終わった理梨が、魔性を秘めた瞳で上目遣いに尋ねる。その姿はまさしく人
を快楽に溺れさせ、魂を堕落させる淫魔――サキュバスであった。
 だが、静流は悪魔と化した妹の姿を見つめ、にこりと笑顔を浮かべる。
「ああ、可愛いよ、理梨。……それじゃあ、はじめるとしようか」
 少年の言葉に、少女は心から嬉しそうな表情を浮かべ、頷いたのであった。

 静流の前にひざまづいた理梨は彼の手を取ると、まるで繊細なガラス細工を扱うようにそ
の甲にそっと口付ける。兄の手から名残惜しそうに口を離すと、朱に染まる顔を上げて彼を
見つめ、媚びるような声を出した。
「では、ごしゅじんさまぁ……どうぞ、リリムになんでもおっしゃってください……」
 まるで召使のように振舞う妹に、静流はかすかに笑いを浮かべて言う。
「いつも言ってるけど、別にご主人様、なんて呼ばなくてもいいんだぞ? 普段通りの呼び
方でもさ」
 そう言われてもなかなか受け入れづらいのか、理梨はもじもじと指を絡め合わせる。
「でも……おにいちゃんはリリムのご主人様でもあるから……」
「まあ、それなら好きに呼べばいいさ。そう呼ばれるのが嫌って訳じゃないんだし」
 優しく微笑みながら、静流は理梨の頭を撫でる。嬉しそうに目を細めて頷いた彼女は兄が
手を頭からどけると立ち上がり、彼に身体を寄せた。
 静流も手を伸ばして理梨を抱き寄せ、その耳元で囁く。
「理梨……服、脱がせて」
「いいの?」
 兄からの珍しい申し出に、理梨はほんのわずか驚いた表情を作る。
「ああ、理梨に脱がせて欲しい」
「うん。……うれしい」
 毎日のように交わってこそいるものの、静流が理梨にこうして甘えるようなことは滅多に
ない。そのため、彼女はシャツのボタンを外すことすらも楽しむかのように、ゆっくりと兄
の服を脱がせていく。
 上着をはだけさせ、静流の引き締まった上半身があらわになると、理梨は一度身体を離し、
ベッドの前に立つ。
「わたしも、脱ぐね」
「ああ」
 理梨は一度羽と尻尾を引っ込め、キャミソールのひもを肩から抜く。服は彼女の身体から
滑るように下に落ち、一糸纏わぬ裸体を静流の前にさらけ出した。
「ごしゅじんさま……リリムのからだ……、どう、ですか?」
 理梨は羞恥と興奮、期待と不安を表情に浮かべながら、静流に尋ねる。再び現れた羽と尻
尾も彼女の感情を映し揺れ動いた。
「綺麗だよ、理梨」
 短くも本心からの言葉に、理梨は頬をさらに紅く染める。招くように微笑を浮かべる静流
に再び抱きつくと、至福の表情を浮かべたまま彼女は主のズボンを脱がせはじめた。
 静流は理梨が脱がせやすいよう、時折腰を浮かし、足を伸ばして彼女を助ける。ズボン、
そしてトランクスが脱がされ、彼もまた生まれたままの姿となった。
「ありがとう、理梨」
「ううん」
 足元にしゃがみこんだ妹の頬に手をあて、静流は言葉をかける。理梨はうっとりと目を細
め、その手に頬ずりした。
「ふぁ……この手、大きくて、あったかくて……だいすき……」
 理梨はそう呟き、愛しげに静流の手に自分の手を添える。そして視線を彼の股間に向ける
と、どこか嬉しそうに言う。
「ごしゅじんさまの……こっちも、もう大きいね」
 言葉の通り、既に静流のものは硬く勃ち上がっていた。理梨は小さな手をそっと彼のもの
に伸ばし、触れる。
「わ……びくんってなった……」
 かすかな刺激も敏感に反応し震えるそれを見つめ、理梨は熱のこもった笑みを浮かべた。
肉欲を抑えきれずに彼女は両手を肉棒に伸ばし、大事そうにそっと包む。
「く……」
 小さく、柔らかな妹の手が自分のものを握り、撫でる感覚に静流は小さく息を吐いた。
「気持ちいい? ごしゅじんさま」
 理梨は快感に震える兄の様子を目ざとく捉え、聞く。その間にも彼女の手は休まず、硬く
なった竿を擦るように動き続ける。彼女の言葉と共に吐き出された熱い息がものにかかり、
彼の背を再び震えさせた。
「まあ、な」
 妹の問いに静流は頷き、彼女の頭にそっと手を置く。髪を梳くように頭をなでてやると、
少女の身体に刻まれたルーンにより増幅された快感が、理梨の息を乱した。くすぐったそう
にしながらも自分のものへの愛撫を続ける妹に、彼は口を開く。
「理梨……口でも、してくれ」
「はぁい……」
 静流の言葉に理梨は興奮に蕩けた瞳で頷き、両手で握った彼のものの先端に軽く口付ける。
「……っ」
 唇が触れた瞬間、指とは違った種類のやわらかさと熱の感触に静流はまるで電気を流され
たように感じ、漏れそうになった喘ぎを口をつぐんで殺した。
「えへ……、はむ……んっ……」
 理梨はそんな彼の顔を見、可愛らしい口を大きく開けると兄のものを頬張る。口いっぱい
のものに、一瞬だけかすかに苦しそうな表情をしたものの、すぐにその顔は淫らな色で塗り
つぶされていく。
「んんっ、おっふぃ……よぉ……ちゅ、ちゅ……じゅ……じゅるる……」
 目の端に涙を浮かべながらも、幸せそうに理梨は肉棒に舌を這わせ、舐め、吸う。手は静
流のものの根元に添えられ、彼に与える快感をさらに高めようと細い指が袋を優しく揉む。
「うっ……くぅ……、理梨、きもち、いいよ……」
 思わずもれた静流の言葉に目を細め、理梨は頭を上下させて口淫を続ける。
「んじゅ、ちゅぷ……ん……っ、んんっ、ぷぁ……」
 まるで大好きなお菓子を舐めるように、一心不乱に頭と舌、手を動かす。そのたびに彼女
の背の羽がはためき、尻尾は快楽に震えた。
 興奮のあまり、理梨の手は無意識に自らの股間に伸びる。彼女は既に愛液でぐちゃぐちゃ
になっていた秘所に指をいれ、かき回した。
「ちゅ、んっ、あ……ん、じゅ……ちゅぷ、……んんっ、ん、ちゅ、じゅる、んむ……」
 身体を貫く快感に涙を浮かべ、頬を紅く染めながらも彼女は主への奉仕を続ける。その姿
は、もはや完全に主への隷属と奉仕の快楽に溺れていた。
「んぷ、あっ……ご、ごしゅじん、さまぁ……り、リリム、あっ……がま、できな……っ」
 奉仕を続ける理梨は、一度肉棒から口を離して顔を上げ、潤んだ瞳で静流を見つめる。そ
の口の端からは涎と先走りの液が混ざり合って垂れ、薄い胸を汚した。
 涙を浮かべて懇願する彼女に、主は微笑みかける。
「ああ、我慢なんてしなくていいんだよ。理梨もちゃんと気持ちよくなって……」
 静流は理梨の頭に手を置き、彼女から生えたサキュバスの証である角の表面に指を添わす
ようにそっと撫でる。
「あ、はぁ……ん……。ごしゅじんさまの、手が……角にぃ……」
 角を撫でられるのが気持ちいいのか、ひくひくと尻尾を振るわせる妹を兄は優しく見つめ
る。やがて彼女は再び彼のものを口に含むと、口での奉仕をはじめた。
「んぶ……ちゅぷ、……んんっ、ちゅ、ちゅう……じゅるる……」
 高まった興奮のせいか、理梨は先ほど以上に激しく舌を動かし、静流のものを貪る。
「……くっ……あ」
 そんな妹の姿に彼もまた言いようの無い高まりを覚え、無意識のうちに彼女の頭に手をや
り、掴んだ。
「んぶぅっ!? んん……ん、ぷ……じゅ、……ちゅぷ……んんっ」
 一瞬驚いた表情を浮かべた理梨だったが、それもすぐに消える。愛する主が自分の奉仕に
興奮し、自分をいっそう求めてくれていると知った彼女はその表情をだらしなく緩め、彼に
快感を与え続ける。気を抜けば一瞬で出してしまいそうな気持ちよさに、彼の表情には快楽
と苦痛が同時に浮かんだ。
「んぷっ……ごひゅふぃんさま、ごふゅじん、さまぁ……っ!」
 肉棒を口に含んだまま、理梨は主を呼ぶ。秘所は彼女自らの手で弄りまわされ、飛び散っ
た汗と愛液が床を汚している。背の羽と尻尾も淫らに動き、時折尖った耳がぴくぴくと震え
て彼女の興奮を表していた。
 快感を感じる静流の表情、息遣い、口内で硬く大きくなっているものの味、臭い、感触。
それら全てが理梨にとって快感を増幅するスパイスであり、あっという間に達してしまいそ
うになっているのは、彼女も同じであった。
 しばし口での奉仕で感じあっていた二人であったが、理梨が一際強く鈴口を吸い上げ、同
時に袋を揉んだ瞬間、静流は限界を超えた。
「うくっ……ッ! あっ……ッ!!」
 短い呻きと共に、彼のものから熱い液体が理梨の口内に迸る。
「んんっ!? んっ、んぷっ……んく……んく……」
 その勢いに一瞬大きく目を見開いた理梨だったが、静流のものから口を離すことはしなか
った。すぐに嬉しそうに笑顔を浮かべ、吐き出すことなく愛しげにのどを鳴らして主の精液
を飲み下していく。
 彼の中に残った最後の一滴まで吸出し、嚥下するとようやく理梨は肉棒から口を離す。は
ぁっと息をつくと、主の静流を上目遣いに見つめた。
「ごしゅじんさまぁ……リリムのご奉仕、どうでしたかぁ……?」
「ああ、すごくよかったよ……」
 理梨の頭をなでながら彼から発せられた言葉に、僕である理梨は至福の表情を浮かべる。
そして、一度出したにも関わらず彼のものがまだ硬く勃ち上がっていることに気付くと、淫
らな色を深めた。
「あは、ごしゅじんさまの……まだまだ、げんきだね……」
「はは、まあね。それに、理梨だってあれだけで満足はしてないだろ?」
「うん……」
 恥ずかしそうにしながらも、こくりと頷く理梨に静流は小さくふきだす。
その声に理梨は顔を上げ、抗議の意を表した。
「あ、ひどいよ笑うなんて〜」
「あはは、悪い悪い。いやなに、毎日毎日やってるのに、今日に限って珍しく恥じらいを見
せるもんだからなんだかおかしくてな。それもそんなカッコでさ」
 笑いながら謝り、静流は一糸纏わぬサキュバス姿の理梨を指差す。角羽尻尾を生やした妹
はその言葉に顔をぼっと赤らめると、消え入りそうな小声で呟いた。
「だって……わたし、おにいちゃんの、ごしゅじんさまのこと大好きなんだもん……。どれ
だけしたって、してあげたって、ぜんぜん足りないんだもん……」
「理梨……」
 妹が自分に向ける深い愛情に、静流は言葉を詰まらせる。目の前で頬を赤らめ、瞳を潤ま
せて自分を見つめる少女に言い表せないほどの愛しさを感じた彼は、理梨を抱き上げた。
「わわっ、ごしゅじんさま!?」
 慌てる理梨に構わず、静流は彼女の華奢な身体をベッドの上にそっと横たえさせる。ベッ
ドが軽く軋んだ音を立て、ツインテールの金髪と、背から生えた紫色の羽がシーツの上に広
がった。
「ん……」
 肌に擦れるシーツの感触に、小さな声が理梨の口から漏れる。
「理梨……理梨を、抱きたい。いいか?」
「うん……リリムはごしゅじんさまのものです。お好きなように、抱いて、ください」
「わかった、ありがとう……じゃ、するよ?」
 彼の言葉に応えるように、理梨の尻尾が揺れる。
「理梨、手、どけて。もっとよく見せて……」
「はい……」
 静流の言葉に、理梨は胸と秘所を覆っていた手をどける。白いシーツの上に寝転ぶ、かす
かに桜に色づいた妹の未成熟な身体を見つめた静流の口から、自然に言葉が発せられた。
「可愛いよ……」
「あ……」
 上から自分を覗き込む静流を見た瞬間、理梨の心臓が跳ねる。そんな少女に彼は優しく微
笑み、自分もベッドに上がるとゆっくりと彼女に覆いかぶさり、その体に舌を伸ばした。
「んっ……れろ……」
「ひゃうぅ……あっ、やあぁ……」
 しっとりと汗ばんだ理梨の肌を、静流の舌が這い回る。彼女の左半身に描かれたルーンが
快感を増幅し、理梨はぶるぶると震えながら嬌声を上げた。
「理梨の身体、美味しいよ……」
 そう囁きながら、理梨の首筋から胸へと静流の舌が動いていく。彼は膨らみかけの胸に手
を添え、ピンと立った彼女の乳首を口に含み、舌で転がした。
「ふぁぁん、だめ、ごしゅじ、さまぁ……、あふっ……やぁん!」
 快感に翻弄され、理梨は声を上げ続ける。尖った耳は真っ赤に染まり、羽と尻尾がシーツ
を叩いた。
「もっと感じていいよ。理梨、もっと気持ちよくなっていいんだよ」
 静流は自分のなすがままになっているそんな妹サキュバスを楽しそうに見、さらに口と手
での愛撫を続けていく。
「あぁ……ごしゅじんさまぁ……、ごしゅじんさまぁ……っ」
 主からもたらされる快楽に涙を零しながら、理梨はうわごとのように呟く。無意識のうち
に彼女は自分から身体を静流に押し付け、さらなる快感を得ようとしていた。いつしか手は
秘所に伸び、割れ目の中に指を入れてかきまわしている。彼女はもう片方の手で静流の手を
とり、同じ場所へと導いていく。
 彼が無言で頷くと、理梨は自分の手を秘所からどける。静流は指をそっと割れ目に添わせ、
強すぎないように、優しく往復させた。
「やっ、ふぁ、あふっ……」
 敏感な場所を触られ、理梨の身体が跳ねる。だが決して拒絶するようなことはなく、彼女
は幸せそうな、淫らな笑顔を浮かべた。
「気持ちいいんだな? いいよ、もっとしてあげる」
 その表情を見た静流は理梨の尖った耳元で、そっと囁く。彼女が頷くより早く、彼は指を
割れ目の中に潜りこませると、激しいとさえいえる勢いで動かした。
「きゃふぅぅ! あっ、ああぁぁっ……やぁぁ!」
 ただでさえ強烈な快感が、ルーンによって倍増させられ理梨は悲鳴を上げて涙をこぼす。
だが、その目に宿るのは、まぎれもない悦びの色であった。
「ああっ、んっ……ごしゅじんさま、もっと……もっとぉ……!」
 だが、それでも満足できないのか、理梨は顔を上げた静流に懇願する。
「あっ、やぁ……ごしゅじん、さまぁ……。おねがい、欲しいの、リリムのここに、ごしゅ
じんさまのが欲しいよぉ……!」
 彼女は自ら指で割れ目を押し広げ、どろどろになったそこを見せ付ける。淫らな肉が主の
ものを求めてひくひくと蠢き、むせかえるような淫臭を放った。
 幼い姿の妹が見せる、これ以上ないほど淫らな姿に静流の興奮も高まっていく。無意識の
うちにつばを飲み込んだ彼は、自らを誘う妹の姿をしたサキュバスに向かって言う。
「ああ……俺も、理梨のそこに挿入れたい」
「うん……きて、ください。リリムのここに、ごしゅじんさまのを……。そして、たくさん、
たくさん気持ちよくなってください……」
 先ほどの奉仕の時以上に硬さと大きさを増した肉棒を見つめ、理梨は主の彼を招くように
両手を広げる。静流も愛しい僕に頷き、先端を彼女の割れ目にあてがった。
「ん……っ」
 敏感な場所同士が触れあい、お互いの口から息が漏れる。
「いくぞ……」
 理梨の両足を広げた静流は、そのまま彼女の足を持ってゆっくりと腰を進めていく。
 妹の未成熟な外見通り、彼女の中はきつく、まるで自分の肉棒をわずかな隙間に差込も、
閉ざされた肉壁を割り進むように彼には感じられた。
 もう数え切れないほど彼女と交わったというのに、いつも理梨の膣内は狭く、きつかった。
まるで彼を離したくないと言わんばかりに絡みつく肉の襞が、静流に強烈な快感を与える。
「ぐぅ……っ」
 すぐにでも出してしまいそうになるのを堪えながら、彼は自分のものを根元まで埋め込む。
「全部、入った……ぞ……」
 先端が子宮に当たる感触に、理梨もぶるぶると震え、両手を静流の背に回し、抱きしめた。
「うん……やぁっ、ごしゅじんさまの、が……奥に、届いてるの、わかるよ……」
 しばし二人は抱き合ったまま、お互いの肌の暖かさと心臓の鼓動が伝わりあうのを楽しん
でいた。
 やがて、静流はそっと身を起こすと、理梨に囁く。
「そろそろ動くぞ……」
「はぁい……いっぱい、きもちよくなって……ね……」
 淫らに蕩けた顔で言う彼女に微笑み、静流は少しずつ腰を引いていく。奥まで埋まった肉
棒が理梨の膣内に擦れ、二人は快感の息を吐いた。
 見つめ合い、頷き合うと今度は再び腰を進め、静流は自分のものを理梨の中に押し込んで
いく。理梨が自ら腰を擦り付けるように動かすと、快感がさらに増幅された。
「く……理梨の……、すごく……、きもち、いいよ……っ」
「り、リリムも……っ、やっ、ごしゅじん、さまのと……あっ……擦れるのっ、きもち、い
いよぅ……!」
 前後するたびに襞が陰茎に絡みついてくる。吸い付くような肉壁のもたらす快感に静流の
動きは段々激しさを増していく。理梨もまた肉棒を最奥まで打ち込まれ、貫かれるような感
覚に快感を感じ、息を荒げて溺れていく。
「理梨、理梨……っ!」
「ああっ、や、んっ、ふぁっ……ごしゅじんさまぁ……っ!」
 ベッドの軋む音と、肉同士を打ち付けあう淫らな音。そして妹であり、僕である者の名を
呼ぶ静流の声と、兄であり、主を呼ぶ理梨の声が室内に響く。
「理梨……っ、もう、出す……ぞ……っ!」
「うん……っ、ちょうだい、リリムの中に、いっぱい、ちょうだい……!」
 その声に答えるように、一際強く、奥まで静流が肉棒を押し込んだのが最後だった。彼の
ものから精液が勢いよく彼女の中に注がれる。
「うぁ、ああ……っ!!」
「あっ、ああっ……でてるっ、ごしゅじんさまのが、リリムの中にっ、いっぱい、でてるよ
ぉ……っ!!」
 静流の身体を抱きしめながら、理梨もびくびくと震え、達する。果てた静流の身体からは
力が抜け、おなじく果ててくたりと寝転がった理梨の隣にゆっくりと倒れこんだ。しかし二
人とも結合を解こうとはせず、繋がったままでベッドに横になる。まるでそれが二人で一つ
の、自分たちの本当の姿であるかのように。
「おつかれさん、理梨」
「おつかれさま、おにいちゃん」
 事後の心地よい疲労感を感じながら、二人はどちらからともなく抱き合う。静流の手が理
梨の髪を優しく梳き、理梨は気持ちよさそうに目を細めて羽を動かした。
「んっ……く」
 理梨の尻尾は静流の肌を撫で、彼の口からはくすぐったそうな声が漏れた。
「こら、尻尾でいたずらすんな」
 苦笑しながらたしなめる兄に、サキュバスの妹はくすくすと笑う。
「なら、おにいちゃんも生やしてみる?」
「勘弁してくれ。そういうのはこの間の薬、あの狼耳と尻尾で十分。発明品の実験はもう懲
りたよ」
 以前に妹の発明品を使ったことを思い出し、静流は疲れた声を出す。そんな彼に、理梨は
申し訳なさそうにうつむいた。
「それなら……」
 止めると言おうとした理梨より先に、彼が口を開く。
「ま、理梨がどうしてもっていうんなら、考えないでもないけどさ。いくら主だって、理梨
の好きなことを止めさせることはできないしな」
 冗談めかして答える兄に、理梨はくすりと笑う。
「それじゃ、今度からはおにいちゃんに気に入ってもらえるようなものをいっぱい作るね?」
「おいおい、マジ勘弁してくれよ」
「えへへ。だめですー。だって、ごしゅじんさまにいっぱい気持ちよくなってもらうのが、
僕であるリリムの役目だもんねー」
 慌てた声を出す静流に、理梨はいたずらっぽく舌を出して笑う。
 そうやってじゃれつき、抱き合いながら二人はいつしか眠りに落ちていった。



「……」
 深夜、ベッドの上で静流は無言のままむくりと身体を起こす。隣にはあの後眠ってしまっ
た理梨が、サキュバス姿のまま布団に包まり、安らかな寝息を立てていた。
 彼は妹を起こさないようにそっとベッドのふちに腰掛けると、シーツに広がる彼女の金髪
を梳いてやる。頭を撫でられる感触に理梨の肩がぴくりと震えたが、目を覚ますことはなか
った。
「ん……おにい、ちゃん……すぅ……すぅ……」
 夢の中でも自分と会っているのか、兄を呼ぶ理梨にふっと微笑み、ずれていた布団をかけ
なおしてやる、無意識なのか布団の端から飛び出た尻尾がぴくぴくと動き、彼に触れた。
 誰にも見せたことのない、決意とも覚悟ともとれる表情を浮かべたまま、静流は理梨を見
つめる。
「大丈夫だ、理梨。お前がサキュバスになっても……もしも、このまま人に戻れなくても。
俺はずっと側にいる。この身が、魂がお前と同じ魔物になっても、側に居続ける。お前にと
って俺がなくてはならないように……俺にも、お前はなくてはならない存在なんだ……」
 その想いを噛みしめ、確かめるように静流は静かに、しかし確固たる意志を込めて言う。
 いまは夢の中にいる、愛しい少女に届くようにと想いを込めながら、静流は理梨の額にそ
っと口付ける。顔を上げ、再び彼女を見つめるその瞳は、魔物である妹のそれと同じ輝きを
宿していた。

――  理梨編・淫魔の主人エンド『愛にすべてを(SOMEBODY TO LOVE)』 終わり ――

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